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「…殿下はどうしてニーナ様を探してるのでしょうか。」
「この前君に言われた通りだからだよ。」
「…婚約者と妹ですか?」
「そう、婚約者の方のね。俺に妹はいないから。」
まさか、本当の事を言ってくるなんて!本当に私がただのニナだったらどうするつもり!?もしかして妹という存在を否定する為かしら…。
「侍女の私が婚約者だなんて。面白い事をおっしゃるのですね。」
私が言うと、胡散臭い笑顔で返してきた。
何で急に強気で攻めてくるの?この前までと別人じゃない。
「ダンスが終わったら、招待客に挨拶に行く。君も付いてきて。」
「はい。ご一緒いたします。」
一人一人に顔を見せるつもりね。必ず名前を名乗らないといけないもの。
私を知っている人に嘘はつけない。それが普通だよね。けど私はニナ・スミスを貫き通すわ。
……一体誰に合わせるつもりなのかしら。
とても不思議なのは、ここまで考える人が、私を放置していたら大変な問題になると何故思わなかったの?
それに何故シャロンみたいな人と付き合おうと思ったのかしら…。
言い方はよくないかもしれないけど、あの女は我が儘を聞いてくれるお金持ちなら誰でもいいんだと思うのよね。
でなければ、招待されてないパーティーに着飾ってくる必要は無いもの。王子が自分に興味を持たなくなった時の為に、誰か探したかったはずよ。
もしかして、あまり上手くいってないのかしら、この2人。
それは駄目よっ!!
子を産んでもらうまでは別れないで…!王妃として頑張ってください!貴女の思うままにしてください。
シャロンじゃなくてもいいの。エドワードが誰かを好きになって、『ニーナなんていらない』って思ってくれればいいのよ。
この際世継ぎとまでは言わないわ。
エドワードが『好きな女性と結婚したいから、王位は誰かに譲ります!』って言うくらい好きな人をつくって貰えば、めでたく婚約解消!
私はこの国で楽しく暮らせるんだよね。
そうよ…。人を放置するような人だもの、
責任感もなく投げ出すかもしれない。
…けれど、私の存在意義によって話は変わって来るよね。
私の国でもそれがわからない…と言ってるなら、クール様からも情報は入らない。
「…ナ、ニナ」
「…っはい。何でしょうか?」
「君は考え事をしながらでも踊れるほど慣れてるんだね。」
「…え?」
「何度か話しかけたけど、気がつかなかったみたいだから。」
「申し訳ございません!曲に合わせるのが
精一杯でしたので、気がつきませんでした。」
本当に…全然気づかなかったわ…。
ダンスも終って、私達は何人かに挨拶に行く。
絶対、誰がなんと言おうとしらばっくれる!
私は『ニナ・スミス』よ。
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