王子様とクール様

1/4
2823人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ

王子様とクール様

ついに舞踏会の日。 これ…ものすごく高級なドレスだよね…。 着てるだけでも恐ろしいわ。破れたりしたら弁償って事にならないわよね? 「ニナ様、支度が整いましたので、こちらでエドワード殿下をお待ち下さい。」 そう言って、ささっと皆下がってしまった。 コンコン 「エドワードだ。開けても構わないか?」 「はい…どうぞ。」 一応ドレスを借りるんだからお礼を言わなきゃ駄目よね。 「素敵なドレスをご用意下さり、ありがとうございます。」 「よく似合っているね」 「ふふ、ありがとうございます。」 絶対思ってないよね。この胡散臭い笑顔! 私の正体を知りたいんでしょうけど、 絶対最後までニナ・スミスでやり過ごしてみせるわ! 「では、行こうか。」 「え…一緒に会場に行くんですか?」 「その為に迎えに来たんだが、何か問題でも?」 「いいえ。」 問題ありすぎよっ。私は目立ちたくないの! …そんな事、王子相手に言えないよね。 私達が一緒に会場に入ると、皆の会話が1度止まった。 シャロンをつれてくるのを期待してた人もきっといるよね。噂の恋人を。 他の女性を連れてくるにしても、侍女を連れてくるなんて…。下手したら恋人疑惑が浮上するよね。それだけは絶対嫌よ。 それにしても、私が知っている人って誰なの?今が出席者を確認する最高の機会だわ。 くるりと見渡すと本当にクール様がいた。 クール様…ものすごく顔がひきつってる…。 「あまり余所見はよくないよ。ニーナ。」 「…私はニナだと何度申し上げれば信じて頂けるのですか。」 「さあ。」 この余裕の笑み…本当に気付かれてる? 大丈夫だよね。ここに私の家族でもいないかぎり……いないよね…? 「君は…踊れる?」 「え…?」 ここで踊れないって言ってもいいのかしら。侍女ってダンスくらい出来るものなの?教育係は?…出来ると言った方が無難だよね。 「…一応は」 「そう、よかった。では一曲お相手願えますか?」 「ええ、よろこんで…」 笑顔よ!例え侍女でもラドクリフ伯爵の名を背負ってるんだから! 踊れるけど…中央で私達が踊るのを披露する…なんて、聞いてないわよ。 踊り始めて暫くして耳元でボソッと呟かれた。 「やっぱり来たね」 「やっぱり?」 「クールだよ。」 「…っ!?」 「『ニナ』が出席するって聞いたら、絶対来ると思ったよ。」 …どういう事? 「クール様がいらっしゃるのですか?」 「ああ、こちらからは招待状は出していないけど、やっぱり彼なら簡単だったみたいだね。ここに来るくらい。」 「そんな事が出来る人だなんて凄いですわね。」 「彼が君の知る人の1人だよ。」 「ええ…伯爵の家で2度ほど顔をあわせましたから。」 「ニーナ・サナス、君の幼馴染み。だよね。」 「私はニナ・スミスです。」 …最初から『知ってる人』にクール様が含まれていた。こんなの予想してなかったわ…。 ステーシーはクール様と仲が良いから予想は出来る。けどこの人は違う。クール様の性格を把握して行動を予想してた…? でも、『伯爵の侍女がいるから来るだろう』なんて想像、普通しないよね?という事は、クール様は別の誰かに会いに来ている…。それがニーナで、行方不明の事も全部知ってるだろう…って予想した事になるよね。 ううん、きっと嘘よ。偶然来たのを見つけて、上手く言ってるだけよ…。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!