2823人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
王子様とクール様
ついに舞踏会の日。
これ…ものすごく高級なドレスだよね…。
着てるだけでも恐ろしいわ。破れたりしたら弁償って事にならないわよね?
「ニナ様、支度が整いましたので、こちらでエドワード殿下をお待ち下さい。」
そう言って、ささっと皆下がってしまった。
コンコン
「エドワードだ。開けても構わないか?」
「はい…どうぞ。」
一応ドレスを借りるんだからお礼を言わなきゃ駄目よね。
「素敵なドレスをご用意下さり、ありがとうございます。」
「よく似合っているね」
「ふふ、ありがとうございます。」
絶対思ってないよね。この胡散臭い笑顔!
私の正体を知りたいんでしょうけど、
絶対最後までニナ・スミスでやり過ごしてみせるわ!
「では、行こうか。」
「え…一緒に会場に行くんですか?」
「その為に迎えに来たんだが、何か問題でも?」
「いいえ。」
問題ありすぎよっ。私は目立ちたくないの!
…そんな事、王子相手に言えないよね。
私達が一緒に会場に入ると、皆の会話が1度止まった。
シャロンをつれてくるのを期待してた人もきっといるよね。噂の恋人を。
他の女性を連れてくるにしても、侍女を連れてくるなんて…。下手したら恋人疑惑が浮上するよね。それだけは絶対嫌よ。
それにしても、私が知っている人って誰なの?今が出席者を確認する最高の機会だわ。
くるりと見渡すと本当にクール様がいた。
クール様…ものすごく顔がひきつってる…。
「あまり余所見はよくないよ。ニーナ。」
「…私はニナだと何度申し上げれば信じて頂けるのですか。」
「さあ。」
この余裕の笑み…本当に気付かれてる?
大丈夫だよね。ここに私の家族でもいないかぎり……いないよね…?
「君は…踊れる?」
「え…?」
ここで踊れないって言ってもいいのかしら。侍女ってダンスくらい出来るものなの?教育係は?…出来ると言った方が無難だよね。
「…一応は」
「そう、よかった。では一曲お相手願えますか?」
「ええ、よろこんで…」
笑顔よ!例え侍女でもラドクリフ伯爵の名を背負ってるんだから!
踊れるけど…中央で私達が踊るのを披露する…なんて、聞いてないわよ。
踊り始めて暫くして耳元でボソッと呟かれた。
「やっぱり来たね」
「やっぱり?」
「クールだよ。」
「…っ!?」
「『ニナ』が出席するって聞いたら、絶対来ると思ったよ。」
…どういう事?
「クール様がいらっしゃるのですか?」
「ああ、こちらからは招待状は出していないけど、やっぱり彼なら簡単だったみたいだね。ここに来るくらい。」
「そんな事が出来る人だなんて凄いですわね。」
「彼が君の知る人の1人だよ。」
「ええ…伯爵の家で2度ほど顔をあわせましたから。」
「ニーナ・サナス、君の幼馴染み。だよね。」
「私はニナ・スミスです。」
…最初から『知ってる人』にクール様が含まれていた。こんなの予想してなかったわ…。
ステーシーはクール様と仲が良いから予想は出来る。けどこの人は違う。クール様の性格を把握して行動を予想してた…?
でも、『伯爵の侍女がいるから来るだろう』なんて想像、普通しないよね?という事は、クール様は別の誰かに会いに来ている…。それがニーナで、行方不明の事も全部知ってるだろう…って予想した事になるよね。
ううん、きっと嘘よ。偶然来たのを見つけて、上手く言ってるだけよ…。
最初のコメントを投稿しよう!