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大ピンチの婚約者
クール様…。
何か仕事がある…とか、そんな事を理由にしてパーティーに出席できたんだと思うし、簡単には近寄れないよね。
お父様のお友達だったとしても、そこまで顔を見た事があるわけでもないし、少し距離をおいて置けばいいよね。
もしくは先手をうつっていう選択もある。私はニーナじゃありません。って思わせればいいんだもの。
どうやって声をかければいいかしら…。物語のように、肩がぶつかってよろける…。
馬鹿みたいな作戦だけど、話をする機会はできるよね。
さっそく、実行よ。
「キャッ!」
「おお、すまんお嬢さん、怪我はない…ああ、ニーナじゃないか。」
「ニーナ…?私はニナともうしますが…。」
「何をいってるんだい。サナス伯爵の家で何回かあってるんだが、忘れたかな?」
おじさん、憶えてるの。けれど忘れた…というか、別人のふりをするわ。ちょっと心苦しいけどね。
「私はニナ・スミスと申します。お間違えではないでしょうか?」
「いや…そんなはずは。」
「私に似ている女性とお知り合いですか?」
「あぁ…似ているというレベルではないよ…。本当にニーナじゃないのかい?」
「ええ、私はニナです。お名前も少し似てますわね。」
とても訝しんでいるわ。さすがに知り合いには無理がある?
「似ているという女性は、このパーティー来るような方なのですか?殿下が主催だと聞いておりましたが。」
私の婚約も正式にはまだ発表されていないはずだし、知ってるのはごくわずか。
「確かに…そうだな。普通に考えれば伯爵がくるはずだ。お嬢さん間違えてすまなかったね。」
「いえ、他人の空似は良くある事ですわ。ぶつかってしまって申し訳ございませんでした。では、私は行くところがございますので、これで失礼します。」
たぶん上手くいったよね!これでエドワードに何か言われても大丈夫だわ。
そのエドワードは消えたままいないのだけどね…。本当に帰ろうかしら。
さっき足を痛めたって言ったからダンスの誘いはないけど、私を見る目は興味津々…といったところね。
「ニナ様」
「…はい。」
誰だろう?
「少しお話があるのだけれど、よろしいかしら。」
よろしいもなにも…私に断るすべなんてないわよ。相手は挨拶の時に、エドワードにサラっと流されてた侯爵の娘…だった気がするもの。
私はラドクリフ伯爵夫人の侍女…。どれだけの影響力をもった侯爵なのかわからないうちは、無下にはできないよね。
向こうだってわかってるから、エドワードがいない隙をみて声をかけてきたはずよ。
嫌な予感しかしないわ。
せめてクール様に伝えたかった…。
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