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授業中の発見
「おい。」
授業中に、生徒の1人が隣の奴を小声でつついた。
「なに?」
隣の奴も小声で応じた。
つついた奴は言った。
「お前、カタカナの『イロハ』の『ロ』の存在意義わかるか?」
「はあ? いや、わかんねえけど。」
「お前はラッキーだ。俺わかったから教えてやる。
あのな、イとハは似てるんだよ。イの縦線を斜め右上にずらすとハになる。ハの右側を縦にして左の斜め線のなかほどに付けるとイになる。」
「あー、なるほどな。確かに。」
「似てる奴らって、気が合うことも多いだろ? マブダチになって格好をお揃いにしたりさ。
だがな、イとハの場合、お揃いになられちゃ困るんだ。」
「なんで?」
「例えば、数をかぞえるとき。イにハが合わせて化けると、イチ、2、3、4、5、6、7、で次がまたイチになっちまって振り出しエンドレス。
イがハに合わせて化けると、いきなりハチから始まって、9、10、で次がじゅうハチ。続くのは19、20、そんでまた、にじゅうハチで、数飛びまくり。
つまり、数が数えられなくなるんだ。」
「ははは、そりゃ困るわ。」
「だから、その予防策として『ロ』というスペースが設けられたんだ。」
「ロってスペースだったんや。」
「俺の仮説だけどな。」
解説した奴はドヤ顔でウインクした。
「そこ! さっきから何くっちゃべってる!」
「イロハの成り立ちについて語り合っていました。」
「そうか。なら、いい。」
授業は、古文の授業だった。
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