春の歌

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*** 「これが私の精一杯だよ」 あおいはやつれた顔で原稿用紙をケンザキに渡した。 「私はそもそも小説なんか書いたことないんだよ。みとさんとさゆりさんにも手伝ってもらってこれで精いっぱいだよ」 結局ケンザキからケチをつけられては書き直し、それを繰り返した結果1カ月にわたる大仕事になってしまった。 「おうサンキューな」 ケンザキはこともなげにそれを受け取った。 「せめて何に使うか教えてよ。頼むからそれで直木賞狙うとか言わないでよ」 「そんなもんは狙わねえよ。これはな、いわば天使からの贈り物や」 やれやれ、とあおいは首を振った。聞いた私がバカだったよ。
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