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いわゆる、あてがきというやつである。……基本、蒔田さんが出演するドラマは、蒔田さんのキャラに合わせてそのドラマのキャラクターが作られている。出演時間は毎回少ないほうで、必ず脇役なのだが、毎回、話題をかっさらう。……よく考えられているなこの脚本、なんて感心する。まるで生の蒔田さんを見てきたかのよう――。
「カット」と静かに蒔田さんが告げる。「……なにか気づいた点はあるか」
「ううん特には」
「そうか。……よし。今日はこんくらいにしておこう」
あんまり練習を繰り返し過ぎると、そのときのライブ感が失われるとのこと。蒔田さんの練習回数は、おそらく、一般的な俳優に比べ、少ないほうだ。――次回作への出演も既に決まっていて、次は、珍しくも。難病に苦しむ息子を育てるシンパパ……という、なんだか難しそうな役を演じる。大きなチャレンジでもある。
「明日は、撮影で丸一日いないから……遅くなる」と蒔田さん。「あんまり焼きもち妬くなよ?」
「妬いてないもん」とあたしがむくれると、そんなあたしを見てふっ、と蒔田さんは笑い、
「……本当のおれを知るのはおまえだけだよ……紘花」
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