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短くキスを落とし、あたしをそっと姫抱きにすると、ベッドへと運んでいく。真っ暗な寝室で――キャンドルをともす。素敵な香りに包まれる。蒔田さんはあたしに顔を寄せると、あたしのほっぺにキスをして、
「……子どもたちの宿題と寝かしつけやってくるから。たまにはぼーっと寝てな」
自分のほうこそ、多忙を極め、今日は久しぶりの休日だったのに。でも平日。なのに――あたしのことを気遣う。
「なんだか……眠くなってきた。寝てたらごめんね?」
「いいよ」と蒔田さん。「寝てたらえっちなことして起こしてやるから」
「んもう」
「ははは」今度は髪をかき分け、額に口づけ、「冗談だよ。……夢の中で抱いてやるから。おやすみ紘花」
そうされると意識がアメーバのようにとろけていった。
* * *
「おはよう蒔田さん」
「おはよう紘花。よく――眠れたか? すっきりした顔をしている」
「そうだね」とあたしは笑った。「……ちょっと、朝からは、口に出せないような内容の夢を見たの」
「そっか」と蒔田さんが笑った。「なら……子どもたちが寝ているうちに。夢の続きでもしようか」
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