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#73 それぞれの明日へ【最終話】
廉が泣いたので授乳をしていると、お母さん入っていい? と娘の声がした。
いいわよ、と応じる。
「すごい……、一生懸命、飲んでいるね……」
授乳をしていると神聖な気持ちになる。与えている側なのに与えられている感覚がするのだ。――愛を。命を。
こんなにかよわい命をわたしは守らなければならない。美織も年の離れた弟が生まれて興味深いらしく、しょっちゅうわたしの様子を見に来る。もう、十三歳なのでいろんなことを分かっている……分かっていて傍で支えてくれる。
母の助けも借りたけれど。美織も様子を見に来たりお世話をしてくれることで救われている。家族みんなで育てている感覚がする。願わくば――この場に和貴がいてくれたら。いま、彼は仕事中だ。
幸せな悩みを抱きつつ、授乳を終えると衣服を整え、廉を抱き上げてげっぷさせてやる。この子はげっぷが上手だ。第二子ということもあってこちらに余裕があるというのもある。廉がげっぷをすると、わあ、おっきいの出たね、と美織が顔をほころばせる。
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