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正直、この年になって第二子は考えてもいなかったのだが――でも、この年になってみたからこそ見えるものがある。落ち着きと余裕だ。余裕を持って、この子には接せられる――
「抱っこしていい?」と言うので勿論よ、と答えると美織が慣れた手つきで廉を抱っこする。立ち上がってめちゃめちゃな子守唄を歌いだすうちに廉が――眠そうにしている。
「美織ちゃん。寝かしつけまでやってみようか」
「うん。する」嬉々と目を輝かせるこの子の未来になにが待っているのだろう。わたしに出来るのは生き続けること。生きて生きて――この子たちを幸せにする。天涯孤独の身となった和貴を支え、自分も幸せになること――。
「あっでも後でドラマ見たいな。最新話配信されてるでしょう?」
わたしは笑った。「ええ。勿論よ」
美織が楽しみにしているドラマ。それに出演するのは――。
* * *
(……なにか、聞こえた気がしたな)
いや気のせいか。冬空を見上げおれは息を吐く。吐く息が白く寒さを視覚的に訴えてくる。エモい野郎め。
「蒔田さーん。次、本番でーす」
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