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「この国の中に入ってこられるのだから、其方も魔法使いだろう?呪われた国にどんな願いが?」
「呪いをその身に受けた者がおります。ライア・ヴァーレンの魔女の呪いを解きたいのです」
タミヤは、手の平の上に乗せた俺を差し出した。
魚の王子から、小さな笑い声が漏れた。
「これは、懐かしいものを見た」
「水の国の尊い御方。トカゲの姿ですが、私はルオと申します。魔道王国ジダの騎士にございます。呪いを解くために、魔女から3つの宝を持ち帰るように言われました。私と共にいらしてはいただけませんか?」
「馬鹿なことを言うな!」
王子の側に、たくさんの魚たちが集まっていた。
その中で赤くてひらひらした魚が、一際高い声で怒りだした。
「王子を何だと心得る!この国から出るだと!!」
魚たちが騒めきだす。
王子は、ひれを揺らして周りを止めた。
「騎士よ、見ての通り私は魚の姿だ。そして、私の歌がなければ、空気の川は消える。国民も息絶えることだろう」
王子は穏やかに語った。俺は、ごくりと息を飲む。
それじゃあ、王子を連れていくわけにはいかないじゃないか。
「1週間」
タミヤが言った。
「1週間だけ、国を出てはいただけませんか?王子の身代わりをご用意致します」
タミヤがパンパンと手を打ち鳴らした。
何もない空間に、黄金の魚がもう一匹浮かぶ。
「歌え」
タミヤが命じると、魚は王子と同じように歌い始めた。
空気の川が広がっていく。
「なんと!」
「これは⋯⋯」
魚たちが騒めいた。
「王子!騙されてはなりませぬ。こんなどこから来たかもわからぬもの!」
赤い魚が叫んだ。
「魔道王国ジダから参りました」
俺は叫んだ。出自くらいは主張したい。
「ジダは遥か昔から続く王国。ライア・ヴァーレンの魔女の名を知らぬものはない」
黄金の王子が呟いた。
「其方たちと共に行けば、魔女に会えるのだな」
「王子!!」
魚たちが戸惑ったように叫ぶ。
「行こう。ただし、本当に1週間で帰してもらえるのか」
「誓いましょう。使い魔タミヤの名にかけて」
タミヤは、王子に向かって嫣然と微笑んだ。
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