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ガラガラガラ!!!
一際大きな雷鳴が鳴り響き、俺はタミヤの手元から離れてしまった。
「ルオ様っっ!!!」
轟音が響く。
ドーン!
眩い光が辺りに炸裂したのを感じた。
一瞬後は、夜のように暗くなる。
強い風と雨の中で。
きりもみ状態で降下していく。
昼と夜が明滅するかのような激しく瞬く光。
「タミヤ!!」
墜ちていく中で、俺は確かに従兄弟のアールンの気配を感じた。
目を開けると、花の上に寝転がっていた。
一面にきらきら光る花が咲いている。青く輝く結晶のような、五弁の花。
この花の輝きが、全体を青く見せるのだろう。
花々の上に小さな生き物たちが飛んでいる。妖精だろうか。小さな人型に薄く透き通った羽。
青い花に妖精たちが舞う姿は幻想的だった。
俺は、人の姿に戻っていた。
アールンが1日3時間なら人の姿になれるって言ってたなあ。
嵐の中で人になりたいと願ったんだろうか?
タミヤ達はどこに行ったんだろう?
久々に人の姿に戻ったので体が痛む。
伸びをしながら起き上がり、痛めたところがないかあちこち確認したが、大丈夫なようだ。
「なんか⋯⋯すごいところ⋯⋯」
切りたった山が遠くに見え、山上に光り輝く塔が立っている。
どこもかしこも、大地から透明な水晶が生えている。あの塔も水晶なのかもしれない。
ふと見ると、妖精たちが群がっている場所があった。
青白い光が強くなっている。
近づいていくと、花の妖精たちがさっとよけた。
そこにあったのは、一つの銀色の卵だった。
大人の男が腕いっぱいに抱えるような、大きな卵が転がっている。
そして、その卵は仄白い光を帯びていた。
「え、これ、もしかして⋯⋯」
俺はその場に跪いた。
卵がカタカタと細かく震えだす。
「俺は冒険者じゃないからよく知らないが⋯⋯。これは話に聞くあれじゃあ」
卵にそっと手を差し伸べた。
卵の周りに漂う淡い光に触れると、びりりと手がしびれる。
「雷⋯⋯!」
アールンが腕にはめてくれた金と黒の糸の腕輪がふわりと光った。
「ゆっくり、ゆっくりだぞ⋯⋯」
俺の言葉を聞くように、卵の震えはぴたりと止まる。そして、ぴし!ぴしりと亀裂が入った。
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