4.雷竜の子

3/3
前へ
/49ページ
次へ
 殻が割れるにつれ、中から淡く青い雷が周囲に溢れる。  ぱん! 「やっぱり⋯⋯!!」  真ん丸な青い瞳に銀の鱗。  青白い光を全身に帯びた、雷竜の子が生まれた。 「どうしよう⋯⋯これ」  雷竜の子は、子犬ぐらいの大きさだった。  時折、ぱちぱちと青い小さな光を放電している。 「きゅう!」  俺を真直ぐに見て、キュウキュウ鳴いている。 「可愛い⋯⋯」  どんな生き物だって、赤ん坊は可愛いものだ。  真ん丸の瞳は青い宝石のようにきれいだった。 「さっきの雷雲は、雷竜たちがいたせいだったのか」  前脚を伸ばしてくるので手を近づけると、ふんふん匂いを嗅ぎ始める。  抱き上げてもいいのかどうかも、よくわからない。  竜の親は大事に子育てをするんじゃなかったか? 「お前⋯⋯、親はどこに行った?」  子竜は甘えるように首を傾げた。 「生まれたばかりで、わかるわけもないか」  キュウキュウ鳴くのが哀れで、結局抱き上げてしまった。  ひとたび抱いたら、地上に置くと、泣きわめく。  放電もひどくなるので、抱いているしかない。  ため息を一つついた後、俺は腕輪を見ながら名前を呼んだ。 「アールン!」  ぼんやりと影のように、目の前に魔法使いの黒い姿が浮かび上がった。 「久しぶりだな、ルオ」 「いつもすまないな、アールン」 「雷雲に巻き込まれたところまでは見たぞ」 「⋯⋯やっぱり助けてくれたんだ。ありがとう」  笑顔になると、従兄弟が少し照れたように見えた。 「ここは森から離れすぎている。思うようには力が届かない。⋯⋯面白いものを抱いているな」  アールンが、雷竜を指さした。 「それは、雷竜の子だろう」  雷竜は、俺の手の中ですっかり力を抜いていた。  安心していると、放電しないようだ。 「さっき卵から生まれたばかりなんだ。親が見当たらなくて、どうしたらいいのかと思って」 「うん?親がいなかったのか?竜は、卵で離れたものの面倒は見ないぞ」 「⋯⋯!?それって⋯⋯」 「その竜が初めて見たのは、誰だ?」 「俺だけど?」 「では、ルオがその竜の親だろう。竜は、初めて見たものを親だと思うから」  きゅうん、と可愛らしく鳴く子竜と俺は、目を見合わせた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加