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殻が割れるにつれ、中から淡く青い雷が周囲に溢れる。
ぱん!
「やっぱり⋯⋯!!」
真ん丸な青い瞳に銀の鱗。
青白い光を全身に帯びた、雷竜の子が生まれた。
「どうしよう⋯⋯これ」
雷竜の子は、子犬ぐらいの大きさだった。
時折、ぱちぱちと青い小さな光を放電している。
「きゅう!」
俺を真直ぐに見て、キュウキュウ鳴いている。
「可愛い⋯⋯」
どんな生き物だって、赤ん坊は可愛いものだ。
真ん丸の瞳は青い宝石のようにきれいだった。
「さっきの雷雲は、雷竜たちがいたせいだったのか」
前脚を伸ばしてくるので手を近づけると、ふんふん匂いを嗅ぎ始める。
抱き上げてもいいのかどうかも、よくわからない。
竜の親は大事に子育てをするんじゃなかったか?
「お前⋯⋯、親はどこに行った?」
子竜は甘えるように首を傾げた。
「生まれたばかりで、わかるわけもないか」
キュウキュウ鳴くのが哀れで、結局抱き上げてしまった。
ひとたび抱いたら、地上に置くと、泣きわめく。
放電もひどくなるので、抱いているしかない。
ため息を一つついた後、俺は腕輪を見ながら名前を呼んだ。
「アールン!」
ぼんやりと影のように、目の前に魔法使いの黒い姿が浮かび上がった。
「久しぶりだな、ルオ」
「いつもすまないな、アールン」
「雷雲に巻き込まれたところまでは見たぞ」
「⋯⋯やっぱり助けてくれたんだ。ありがとう」
笑顔になると、従兄弟が少し照れたように見えた。
「ここは森から離れすぎている。思うようには力が届かない。⋯⋯面白いものを抱いているな」
アールンが、雷竜を指さした。
「それは、雷竜の子だろう」
雷竜は、俺の手の中ですっかり力を抜いていた。
安心していると、放電しないようだ。
「さっき卵から生まれたばかりなんだ。親が見当たらなくて、どうしたらいいのかと思って」
「うん?親がいなかったのか?竜は、卵で離れたものの面倒は見ないぞ」
「⋯⋯!?それって⋯⋯」
「その竜が初めて見たのは、誰だ?」
「俺だけど?」
「では、ルオがその竜の親だろう。竜は、初めて見たものを親だと思うから」
きゅうん、と可愛らしく鳴く子竜と俺は、目を見合わせた。
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