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「ア──ル──ン!!」
名前を呼んだ途端、体は銀色の光に包まれる。
足元から渦を巻くように頭上に向かって輝く光の群れ。
小さなアールンは、いつもベッドで待っていた。
高い熱を出した時は、隣で手を握る。
魔力の暴発で怪我をした日は、本を読んだり、話をしたりする。
俺たちは、しょっちゅう一緒にいた。
成長するにつれて、アールンの体は少しずつ強くなり、魔法の修行に明け暮れた。
アールンが生きていくために、それは必要な事だったから。
トカゲになったせいなのか、いつものアールンの部屋の中には飛べなかった。
森の前に落ちた俺は、必死に従兄弟の名を呼んだ。
俺が呼べば、アールンは必ず来てくれる。
アールンの厚めの唇から、深いため息が出た。
「悪いが、ルオ。ライア・ヴァーレンの魔女の呪いは解けない」
「うん、わかってる。国の最高位の魔女だからな」
でも、この姿のままじゃ困る。
俺はもう一度、人間の姿でエドゥに会いたいんだ。
エドゥの泣き顔が浮かんで心が痛む。今頃、どうしているだろう。
「リセリナの呪いを返すほどの力は俺にはない⋯⋯。ただ」
「ただ?」
アールンは、黒く染めた爪の先を俺の頭にちょんと乗せた。
「呪いを軽くすることはできる」
「軽く?」
「そうだ。一日の内で数時間、人の姿に戻ることができるようにしよう。そうしたら、少しは宝も見つけやすくなるだろう」
数時間でも!人に戻ることができる!!
俺は嬉しかった。
「アールン!でも」
俺の頭にはいつも、魔力に泣いている幼いアールンの姿が浮かぶ。
「お前は大丈夫なのか?」
「心配しなくていい。これは呪いを返すわけじゃない。病が和らぐように、薬を与えるようなものだ」
アールンは見惚れるような笑顔で微笑んだ。
「それに、大事な従兄弟をトカゲに変えた礼はしないとな。魔女殿に」
アールンの金の瞳の中に小さな怒りの炎が灯る。
トカゲになっていた俺の目では、それに気づくことは出来なかった。
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