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3.歌う魚
「それで、ルオ?リセリナの言った3つの宝とは?」
「歌う魚、炎の氷花、星のため息」
アールンは眉をひそめた。
魔法使いは、左指の真ん中に嵌めていた金の指輪に息を吹きかける。
凝った細工物は、遥か昔にドワーフが作ったものだと言う。
アールンの父方のひいばあさんのものだったそうだ。
淡い金の光がその場に煌めいたかと思うと、腰まである金の髪の青年が立っていた。
俺は目を丸くして見つめた。
「お呼びですか?ご主人」
穏やかな深みのある声が響き、アールンに跪いて礼をとる。
「ご苦労。頼みがある」
アールンは机の上の俺を見た。
「従兄弟のルオの供をしてほしい」
「ご主人。これはトカゲだ。しかし、確かに人の気配がする」
金のまつ毛をぱちぱちと動かすと、人形のように美しい顔に生気が宿る。
「タミヤ、俺はこの森から出られない。ルオがライア・ヴァーレンの魔女から請け負った宝を探し出せ」
「仰せのままに。我が主人」
ゆったりとした長い衣を纏った男が立ち上がって微笑んだ。
アールンは、俺に向かって手の平を差し出した。大急ぎで指を這い登る。
アールンが俺を鼻先に近づけて、低く呪文を唱えた。
「わわわわっ!!」
途端に、俺は人の姿に戻った。
「これで、お前が望んだなら人に戻ることが出来る。1日のうちで3時間だけだが」
「あ、アールン!ありがとう!!」
俺は喜びのあまり、アールンに抱きついた。
アールンは俺の右手を取り、黒と金の糸で編んだ輪を腕に結び付けた。
「トカゲの姿の時は、お前の尾に結ばれることになるだろう。お守りだ。何かあったら、俺かタミヤの名を呼べばいい」
「ありがとう、アールン!本当に感謝してる。何と礼を言ったらいいか⋯⋯。俺に出来る礼なら、どんなことでもする」
「へーえ!どんなことでも?」
「もちろん!」
俺は強く頷いた。
アールンの眉が上がり、瞳が悪戯っぽく輝く。黒い爪に彩られた長い指が俺のあごに伸びた。
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