3.歌う魚

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 えっと思った時には、アールンの美しい顔が目の前に迫り、柔らかいものが唇に触れていた。角度を変えて、ちゅちゅっとキスをされる。 「んんんんーーーー!!!???」  アールンは、ぺろりと俺の唇を舐めた後、花のような微笑みを向けた。 「まずは、これで」 「ま、まずは???」  俺の顔は真っ赤になっているに違いない。 「さ、ルオ様!行きますよ!!」  さっと手が伸びてきて、タミヤが俺のシャツの襟を後ろからぐいっと掴む。 「わあああぁっ!」  次の瞬間には、俺の姿は茶色のトカゲになって、タミヤの手の平の上にいた。  離れ森を下に見ながら、俺とタミヤは宙に浮いていた。  アールンの屋敷は、もう豆粒のように小さい。庭で見送ってくれた魔法使いの姿は、とうに見えなかった。 「なあ、これで俺たち、旅をするのか?魔法使って、ぱぱっと移動するんじゃなくて?」 「ぱっと人が転移できる魔法は高度なんです。ご主人とルオ様のお屋敷は、魔法陣で結ばれてるでしょ?あれも、結構大変なんですよ。それに私は使い魔ですから、私の使えるものでいきますよ」  そう言って、タミヤは魔法の絨毯の真ん中で胡坐(あぐら)をかいている。  俺は、その膝の上にちょんと乗せられているのだ。  元々使い魔は、主に従うもの。タミヤはアールンの命令に従っているだけ。  俺が文句を言える筋合いではない。 「タミヤ。俺はリセリナの言った宝を全く知らないんだ。お前はわかるのか?」 「⋯⋯どれも覚えがございます。まずは、『歌う魚』を手に入れましょう」  タミヤがそう言った途端に、絨毯は速度を上げた。  絨毯は、丸一昼夜、飛び続けた。 「ここから先は、()は入れません」  眠って起きたら、前方に青く煙る広大な空間が見えた。  はるか下の大地から空までが、青一色で繋がっているように見える。 「はああああ⋯⋯。なに、あれー」 「水の国です。大きな魔法が国を丸ごと覆っています。ルオ様、口を開けて」  タミヤの手のひらの上で、小さな小さな粒を呑み込む。 「これで、水の中でも息ができるはずですよ」  そう言って、俺たちは水の空間に飛び込んだ。
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