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えっと思った時には、アールンの美しい顔が目の前に迫り、柔らかいものが唇に触れていた。角度を変えて、ちゅちゅっとキスをされる。
「んんんんーーーー!!!???」
アールンは、ぺろりと俺の唇を舐めた後、花のような微笑みを向けた。
「まずは、これで」
「ま、まずは???」
俺の顔は真っ赤になっているに違いない。
「さ、ルオ様!行きますよ!!」
さっと手が伸びてきて、タミヤが俺のシャツの襟を後ろからぐいっと掴む。
「わあああぁっ!」
次の瞬間には、俺の姿は茶色のトカゲになって、タミヤの手の平の上にいた。
離れ森を下に見ながら、俺とタミヤは宙に浮いていた。
アールンの屋敷は、もう豆粒のように小さい。庭で見送ってくれた魔法使いの姿は、とうに見えなかった。
「なあ、これで俺たち、旅をするのか?魔法使って、ぱぱっと移動するんじゃなくて?」
「ぱっと人が転移できる魔法は高度なんです。ご主人とルオ様のお屋敷は、魔法陣で結ばれてるでしょ?あれも、結構大変なんですよ。それに私は使い魔ですから、私の使えるものでいきますよ」
そう言って、タミヤは魔法の絨毯の真ん中で胡坐をかいている。
俺は、その膝の上にちょんと乗せられているのだ。
元々使い魔は、主に従うもの。タミヤはアールンの命令に従っているだけ。
俺が文句を言える筋合いではない。
「タミヤ。俺はリセリナの言った宝を全く知らないんだ。お前はわかるのか?」
「⋯⋯どれも覚えがございます。まずは、『歌う魚』を手に入れましょう」
タミヤがそう言った途端に、絨毯は速度を上げた。
絨毯は、丸一昼夜、飛び続けた。
「ここから先は、人は入れません」
眠って起きたら、前方に青く煙る広大な空間が見えた。
はるか下の大地から空までが、青一色で繋がっているように見える。
「はああああ⋯⋯。なに、あれー」
「水の国です。大きな魔法が国を丸ごと覆っています。ルオ様、口を開けて」
タミヤの手のひらの上で、小さな小さな粒を呑み込む。
「これで、水の中でも息ができるはずですよ」
そう言って、俺たちは水の空間に飛び込んだ。
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