37:届け! 農民からのあまたのお便り

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37:届け! 農民からのあまたのお便り

 農村では村長が頭を悩ませていた。  今日は週に一回の、村の農民が全員集まって話し合う日。もとはグローリアが週一で演奏しに来ていた日である。 「ワシの経験から推測すると、おとといのクーデターは、グローリア様が毒殺されそうになったことと関連があると思うのじゃが」 「絶対そうだろ! グローリア様が邪魔だったから毒で……!」  自分たちの恩人であるグローリア。彼女のいないところでは、だいぶ前から『アールテムの聖女』と崇める存在になっている。  そんな神聖な聖女を傷つけたことは、農民にとって絶対に許せないものであった。 「とにかくワシらは、トリスタン公爵に逆らう姿勢で行こうかの。あやつが国王になるなど認めん。ワシらを元の『食料調達人』にしてはならぬ」 「それは分かっています。しかし農民だけでは……」  村長が何かひらめいたようだ。 「なんとしてでも、グローリア様の一日でも早い回復を祈るしかない。手紙でも絵でもよいから、グローリア様を勇気づけるものを作ってほしい」 「「「おぉ!」」」  村民全員が感嘆の声をあげる。 「グローリア様から少し文字を教わったから、お手紙書いてみようかな」 「サックスのお姉ちゃんの絵描くー!」 「俺も描く!」  さっそく農民たちは農作業の合間をぬって、いそいそとプレゼントの用意をし始めたのだった。
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