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「財政難のため、来週から国民一律 三割の税に変更する。支払わなければ脱税として一年の懲役だ」
突然、アームテム王国の国民に言い渡された。
勝手に国王と名乗り、国を牛耳り始めたトリスタン。私は毎日のように抗議の文書を送り続けているが、ただの紙くずになっているだけだろう。
私は分かっている。税率を上げたのは、戦争の賠償金を支払うためである。たくさんの兵士を戦場に駆り出しておいて、その尻拭いも国民にさせるつもりだと。
「マジでふざんけんじゃねぇ……!」
一日でも早く戻らなければ。
リハビリを始めてからは、体が動かないという絶望しか感じていなかったものが、元の生活に戻れるようにするという一つの目標ができた。
闇雲に走り続けることはできないけど、目標があるなら頑張れる。
「トリスタン、あなたの好きなようにはさせないからね!」
私は早歩きの練習で息を荒らげながら、指の骨をポキポキと鳴らした。
「あっ、お姉ちゃん! がんばってね」
ひょこっと、どこからともなくリリーが出てきた。
やべっ、今の聞こえちゃったかな?
「そろそろサックスできそう?」
あっ、今の聞かれてなかったかな。ふぅ。
うーん、まだ体力に自信ないしなぁ。何分か吹いただけでバテそうだし。でも。
「あんまり吹かなさすぎてもダメだもんね。ちょっとやってみようか」
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