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見つけてしまった。
おい……マジかよ、こんな忘れ物するか? うちの学校名が書いてあるし、明らかにパーカス(パーカッション)の忘れ物だよね?
丁字型の金属製の物体。これは確か、ティンパニをチューニングする時に使うやつだったような。
みんなでまとめて置いてあるバッグの塊から見つけた。パーカス、ちゃんとしてよ……。
「先生、これ、パーカスの方に届けに行ってきます」
「ああ、急いで」
私の手の中にあるものを見た顧問は、小さくため息をつく。今ごろないないと探しているに違いない。
首にかけたストラップ(サックスは金属製で重たいので、首でも支えられるようにする道具)から、相棒の楽器をぶら下げたまま、私は早歩きで荷物置き場の部屋を飛び出した。
楽器を誰かに預ければよかったと後悔するが、もう遅い。
『関係者以外立入禁止』のドアからステージの裏側にまわり、打楽器の群れが見えて私はほっとした。
「忘れ物っ!」
「あぁっ、あった! ありがとうございます!!」
少し息を切らし、変に早歩きしたせいでふくらはぎが痛みつつも、私は後輩に握らせるように手渡した。まだ開会式まで時間があるようなので、間に合ってよかった。
ふとステージに目をやると、イスが並べられている最中であった。
「あと三つ持ってきて!」
スタッフがこちらに走ってくる。私の後ろには身長をゆうに越える高さでイスが積まれていた。積まれている荷台はキャスターつきで、積み上げたものが崩れないよう囲いがついている。いや……上の方は囲いからはみ出ているのだが。
「こいつから取るのか……」
その人は「脚立、脚立」とどこかへ行ってしまった。
イス並べの人の他にも、舞台裏では何人もの人がせわしなく往来している。
「さっき行ったばっかなのに……先輩、トイレどこでしたっけ?」
腕時計をしている後輩が同じパートの先輩に尋ねる。
緊張してトイレ近いのかな? ふふっ、かわいい。
「そこのドアから出て右に曲がったところにあった気がする」
「ありがとうございます!」
コンクールの日は別行動になるパーカスの裏側を、少しでも見られただけで笑みがこぼれる私。
「じゃあそろそろ私も戻るね。またあとで〜」
「奏音先輩、本当にありがとうございました!」
「いえいえ〜」
私は右手を振ると、トイレに行く後輩に続いて歩き出した。
その時だった。
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