短編 ただの音楽バカにはなりたくない

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 私の高校の吹奏楽部は、毎年全日本大会に出場している強豪校だ。一日休みは月に一度あったらマシな方。 「今日の学指揮(がくしき)は奏音だよね?」 「……あっ、そっか。私か」  危うく仕事をすっぽかしそうになり、ヒヤヒヤする私。  明日から一週間半はできないから、いつも以上にちゃんとやろう! とやる気マンマンだったのだが。  学生指揮者の仕事は日替わりで、しかも私含めて五人いるので、忘れやすいのだ……と言い訳をしてみる。  昨日の学指揮から指揮棒を受け取ると、サックスを静かにイスの上に置いて、指揮者専用のイスに座った。  目の前には指揮者用の大きめの譜面台、横にはキーボードが置いてある。このキーボードでメトロノームの音を流したり、音取りをしたりする。  パンパンパン  私は手を何回か(たた)いて、個人練習を一旦止めさせる。
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