短編 ただの音楽バカにはなりたくない

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 昼休み、私はテストのために英単語帳とにらめっこしていると、先月の模試の結果が返ってきたのだ。  何も、テスト勉強で忙しくてメンタルがやられるこの時じゃなくてもいいのにさぁ。 「はい、出席番号順に取りにきてー」  出席番号二番の私は急いで赤シートを英単語帳に挟み、通路にあるリュックを飛び越えて『結果シート』を受け取る。 「……おっ、よっしゃ」  前回と比べると、国語も数学も世界史も英語も、少しずつ偏差値が上がっていた。 「えっ、奏音すごいじゃん」  後ろから、クラスで一番仲がいい友だちがシートをのぞきこんでいたのだ。 「うわっ、ちょっと何で見るの!」 「いいじゃん、私より頭いいし」  ポンッと私の頭に手を乗せてつかまれると、円を描くようにぐるぐると回される。 「あの吹部に入りながらこの成績はすごいよ。だってそもそも『吹奏楽特進コース』があるのに、あえて普通科から音大行くんでしょ?」 「そう、ただ音楽しかできない人にはなりたくなかったから」  苦笑する私。
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