短編 ただの音楽バカにはなりたくない

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 もちろん私の夢は、音大を出てプロのサックス奏者になることだ。それだけではない。いつか自分の吹奏楽団を持ってみたいとも思っている。  そうなると必要なのは、みんなをまとめる力と指導力である。音を『こういう感じで』と言葉で説明するのは難しい。やはりお勉強ができないとやっていけない。 「奏音さー、よく自分のこと『その場しのぎでやってきた人』って言うけどさー、ホントはちゃんと考えてるでしょ」 「これで考えてるっていうのかな? みんな考えてるんじゃないの?」 「だってさー、まだ進路決めてない人だっていると思うけど」 「ふーん」  進路はしっかり考えざるを得なかったというか……これからコンクールシーズンに入るから、計画的に勉強しなきゃいけないし……。 「まっ、お互いに頑張るだけだね」  笑って手を振り、友だちは席に戻っていく。  友だちは運動部で、私は文化部。既に友だちは部活を引退しているが、私は引退するどころか勝負はこれからだ。  そういう意味でハンデはあるが、そんなことで嘆いていられない。高校受験の時にそれは経験済みなので、分かっていながら高校でも吹奏楽を続けている。  確かに大変だけど。
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