花患い

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ある日、自分の世界が一変する。何てことはない。私にはもう三度目だから。 階段の途中にも、植物は生い茂っていた。 よくよく見ると不思議な事に、これらの植物は普通のそれとは違う生え方をしているようだった。大体樹木というのは縦に真っ直ぐ伸びていくものだと思うが、施設に生えている木は幹から斜めに伸びたり、横に伸びたりしていた。何だかそこだけ空間が歪んでいるんじゃないかって思うぐらい、奇妙な生え方をしていた。 極めつけは、木についている花の蕾だった。それらは見覚えがある。私の腕にも咲いている、謎の花。何でこれと同じ花の蕾が、突然生えた木にあるのか。嫌な事ばかりが連想されそうで、私は頭を振って階段を上る。幸い、階段を塞ぐほどの大きな木は生えていなかった。 そして屋上への扉を開いた時、私は見てしまった。 空の青に向かって広がる緑。一際大きい大木が、屋上のコンクリートの上に根付いていた。 その大木には見覚えがあり過ぎる黄色の蕾。枝に引っ掛かって風に靡く白衣。そのネームプレートには、見知った名前。がつんと頭を殴られたような衝撃で、私はその場に立ち竦んでいた。 「白田センセイ?」 勿論、大木からの返答はなかった。
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