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花患い
2XXX年4月1日。
一晩にして身体に芽吹いていたソレは、突如として日常を壊した。
これは人類に起こった未曽有の事態に対する記録であり、一個人の結末と共に人類の可能性の結末を書き綴ったものでもある。
この場所へ書き残すのは一抹の希望であり、そしてーーー(記述後半は解読不可)
◇◇◇
「私はどこも悪くないっ!」
その日、私は人生で一番叫んだと思う。嘘くさい涙を流しながら私を見送る両親を力一杯睨み付け、ギリリと音が鳴るまで歯を噛み締めた。知ってる、本当は厄介払いが出来て安堵しているんだって。私を化け物のように見ていた視線を思い出すと涙が出そうだった。
けれど感傷に浸る時間すら私には与えられなかった。複数の見知らぬ大人達に腕を引かれて連行されていく。防護服を着た大人達が寄ってたかって腕を伸ばしてくるのが恐ろしく、必死で抵抗した。防護服達を掻い潜って、医療服姿にマスクという軽装の人物達に駆け寄ると、途端に悲鳴が上がった。
コレがうつると思っているのだろう。
私が一瞬悲鳴に怯んでいると、顔に布を押し付けられた。何か嗅がされたのだと気付いた時には既に、脳がぐるりと反転した心地になり、全身から力を失っていた。私の日常だった日々はこの日を境に変わってしまったのだ。永遠に。
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