#03-04.愛している

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「……三十代既婚者の六割が『レス』な時代なんですけど……」子どもたちにふさわしくないトークだと知りつつも、聡美の弁は止まらない。「さてさて。世の中が、男性中心の行為にまみれているのは皆さんご存知の通りですが、この二十一世紀。超高齢化超少子化の進む社会において、いよいよ女性中心のセックスが普及するどころか、若者のあいだで『レス』が進んでいるというではありませんか! さーこの緊急事態に政府はどう動くのか……」 「ママちょっと向こうで休もうか」ぽかん、とする子どもたちを置いて百瀬は聡美を寝室へと運んでいく。聡美を横たえると、後ろ手でドアを閉め、こう言い放つ。 「ぼくがこう動くのは厳然たる事実だよ」  やがて彼女の衣類に手をかけると、彼女の欲しくてたまらない言葉を耳元にくれる。  ―― 「あたしも」  更に欲しくてたまらない官能の波に聡美が溺れるのはその数瞬後のことであった。  ―完― 参考文献: 飯野たから・神木正裕(1998)『実戦 離婚マニュアル・男性版』自由国民社 工藤啓(2011)『NPOで働く』東洋経済新報社 工藤啓(2012)『大卒だって無職になる』エンターブレイン
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