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こんな夜は、決まって月明かりが薄くて悲し過ぎる。どんな死にざまも目に焼き付けて置きたい、奪われた命に失礼だから。奪った者はそれを忘れてはいけないから。
だからか、男は微笑んで居た。目尻を柔らかく下げて口元を緩ませ、すでに息絶えてしまった髭面の中年男の躯を見つめて居た。そして静かに片膝を着き、躯の見開いたままの目を閉じてやる。
男は、人を殺す事を生業としたアサシンと呼ばれる存在――名をレプレ。それは本当の名前では無いが、本当の名前を忘れてしまった今となってはそれが名前だ。実は少し気に入って居るし。
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武器の握り過ぎで、私の掌はいつも血豆だらけです。食事に使うナイフやフォークより、武器を手にして居る時間の方が長いです。
食事によって命を奪うより、こうして自らの手で誰かを殺める事の方が多いんじゃないかな。それが仕事であり私が存在する意味、でも、これは強いられて居る事でもある。
私は人殺しで、私が帰る場所は私と同じ"人殺し達"の居る場所だから。
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