***

5/12
前へ
/12ページ
次へ
結太にお見合いの話がきても、私に愛の告白をする人がいても、私達は全てお断りした。 蕎麦屋が定休日の日には、遠くで待ち合わせをして、誰にも見つからない誰も知らない町でデートをした。 楽しくて楽しくて、でも、その日が終わる頃は、たまらなく寂しくて… ポロポロ涙を流す私を、結太何度も優しく抱きしめた。 言葉はなくていい。 言葉は二人をダメにする。 愛を語りたくても、私達には未来はないのだから。 二十三歳の梅雨の季節。 二人のデートは雨で台無しになった。 でも、いつのもように遠出して、海が見える駐車場に車を止めた。 窓から見える海は、寂しい灰色の海。 まるで私達の心を見透かされているみたい。 透明にはなれない濁った海は、私達に限界を告げていた。 「今の時代じゃなかったら良かった… もっと前の時代だったら、いとこ同士は普通に結婚できたのに。 何で今の時代に生まれちゃったんだろう」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加