***

1/12
前へ
/12ページ
次へ

***

もう、夢見る事はやめる…… そう思って十年が過ぎた。 物心ついた時から結太の事が好きだった。 結太っていうのは、私の母方の従兄で私より二歳年上、そして男三兄弟の長男。 実家は蕎麦屋。 その蕎麦屋は私の家の二軒隣で、私達は兄弟のように育った。 私は二人姉妹のお姉ちゃんの方で、活発な妹に隠れた典型的な引っ込み思案。 子どもの頃の結太はそんな私のお世話係だった。 うん? それは今でも変わらないけど… 私は結太に依存し過ぎてたみたい。 結太の好物は私も大好き、結太の好きな映画は必ず観に行く、結太の話す話は世界一面白い。 私の中の全ては結太のエッセンスで彩られていた。 結太だけで廻っていた私の世界。 従兄とか身内とか関係ない、結太は幼い私のヒーローで王子様だった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加