逢瀬

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「黒蜜、ついてたよ」 「…えっ…す、すみません…」 理瀬の慌てた様子に、稔麿はくすくすと笑いながら、理瀬の唇から拭いとった黒蜜をペロリと舌で舐める。 「ん、甘い」 (ちょっ…、何をっ!?) 羞恥心が一気に溢れ出し、理瀬の顔が真っ赤に染まった。 「あれ?理瀬、顔赤い。もしかして、意識したの?」 目を細めて意地悪い笑みを浮かべる稔麿に、理瀬はムッときて、赤く染まった顔をぷいと逸らす。 「急に触れられたからです。稔麿さんのこと意識したわけじゃありませんから」 「あ、拗ねた。ごめんごめん、怒らないで?」 「驚きましたけど、怒ったわけではないです」 「そう?それならよかった」 「良くはないですけど…もういいです」 楽しそうな稔麿の様子に、理瀬はため息をついた。 (この人、ほんとに調子が狂う) 理瀬の感情などお構いなしでグイグイと押してくる。 強引で、人好きのする笑顔と雰囲気のせいで邪険にできない。 (だけど…) 理瀬は少しの間だが、稔麿と過ごしてわかったことがひとつある。 (この人、楽しそうにしてても、心の底から笑っていない) 笑顔と裏で、瞳の奥には暗い影が落ちている。 自分と似た色を帯びた瞳が、理瀬は頭から離れなかった。   db84d19e-8d20-45c6-95d9-b554921c56c2
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