逢瀬

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(ほんとに、強引すぎない?) 仕事はそんなに簡単に抜けられるものでもない。 理瀬の場合、裏の仕事だと伝えればある程度融通はきくが、決して葵屋は暇ではないし、理瀬が抜けた分は誰かが負担するのだ。 (それにしても、よくも隠れもせず堂々とできるよね) 昨年の夏、長州藩が京から追い出された事件は、大騒ぎになり誰でも知っている。 仮にも潜伏している立場で、稔麿は顔も隠さずあまりにも自由すぎないかと、隣を歩いていた理瀬の方がそわそわと落ち着かなかった。 けれど、稔麿が苦手だということを抜きにすれば、甘味を食べながらゆっくりと過ごした刻は決して嫌ではなく、理瀬は複雑な思いを抱く。 目的のために、稔麿に近づくと決めたものの、数日続けて会うことになるとは思ってもいなかった。 (まぁ、なんだか複雑だけど、どうやって近づくか考えなくてもいいし、よかったってことにしよう) 葵屋の外ではあまり関わりたくないという気持ちは僅かに残るものの、今の状況を前向きに考えることにした。 「さて、帰ろう」 一息つき、理瀬は気持ちを切り替え葵屋へと戻っていった。
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