次につながるプロローグという名のエピローグ

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 むむむ…と俺は頭を悩ませたが、ぜんぜん閃かない。  そんな俺の知らない謎のガールフレンドが犬彦さんにはいるというのか…?  「言っとくけどさ、これはたぶん氷山の一角だよ。  高級ネクタイの女も、ココアパウダーの女も、江蓮君の知らないガールフレンドたちの一部に過ぎないと思うね。  もっといるよ確実に、本妻の江蓮君にはバレていない浮気女たちが。  だってさー、江蓮君に言ってたんでしょ? 自分は結婚願望ないって。  それの意味って分かる?  責任が発生する一人の女と所帯は持たないけど、のらりくらりとガールフレンドいっぱい作って女遊びはしますよって意味だよ世間一般的には」  「えぇ…なんかそれって、ただの最低な男ってカンジするんですが…」  「いやホントそれは悪いけどサイテー系の属性だよ男としては。  だけど君のお兄さんって、そういうのをスマートにこなしちゃう恐ろしさを持ち合わせてるでしょ?  世の中的には最低なことを、そう悟らせずカッコよさに還元してしまう謎のチートアビリティ」  ぐううっ! いかにも犬彦さんをバカにしている今の言葉を否定したい!  すごく否定したいけど…でもどこか納得しちゃって否定できない俺がいる、どうしよう!  くやしい気持ちでいっぱいになりながら俺は、ぐぬぬ…とテーブルを挟んだむこう側でニヤニヤとしながらこちらを眺めてくるあの顔を…茜さんを見た。  「だからさー、まあ江蓮君の悩みを聞いて推理をした結論としてはね、あのお兄さんは結局、可愛い弟の江蓮君しか眼中になさそうだから、たまに君の知らない女の影がちらほらしたとしてもただの遊びとして、本妻らしくドーンと構えて許してやんなさいってこと」  「…なんなんですか、その結論…」  もうダメだ…久しぶりに会うから過度に期待しちゃったけど、茜さんっていう人は、こういう人だった…。  茜さんが今言っていたように俺が知らなかっただけで、真実の犬彦さんはワルな男だったんだろうか?  犬彦さんのモラルに関する問題は何ひとつ解決していないわけだけど、こうして自分一人の心の中だけにモヤモヤとためこんでいた悩みを茜さんへ口にしたことで、俺の気持ちがすっきりしていたのは確かだった、そこは感謝する。  「じゃ、江蓮君の悩みが見事解決したところで、俺たちの今回の事件についての推理をはじめようか」  だけど…一難去ってまた一難、一個問題が解決したと思ったらまた別の問題…というか事件が起きてしまうのが、人生の仕組みなんだろうか…?  にこにこと心の底から楽しそうな笑みを浮かべてこっちを見ている茜さんの様子に、俺の方はハア…とため息をついてしまう。  とりあえずうちに帰ったら、あったかい濃厚ホットココアを作って犬彦さんと飲もう…そう俺は思った。  
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