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「やったー! できあがってる!」
そして時が経ち、すっかり冷えて完成したチョコレートたちを前に、俺と天音は同時に歓声を上げる。
うん、見た目もきれいに出来てる! 型崩れすることもなく、艶やかに並ぶチョコレートたち。
料理本の見本として、このチョコレートたちの写真が載せられててもおかしくないくらいには、いい感じに仕上がっている。
これなら人にあげても恥ずかしくない。
見た目はグッド。
じゃあ味の方はどうだろうかと、俺と天音はそれぞれ、全種類の味のチョコを一個ずつお皿にのっけて、さっそく実食してみる。
うーん、これこれ! この瞬間のために俺は毎年天音のうちでチョコレートを作っているんですよ!
あったかい紅茶をマグカップへ淹れ直して、チョコレートがのったお皿を手にした俺たちは、リビングのテーブルの前に集合し、席に座って味見をする。
スクウェア型でココアパウダーが上にかかった生クリーム入ビターチョコ、アーモンド、クルミ、オレンジピール、それぞれが中にINしている円形チョコ、あとはバナナやイチゴなどのフルーツにチョコをコーティングしたやつ。
ふふーん、どれからいこっかな〜!
じゃあまずこれ、犬彦さんの口にいちばん合いそうな、甘すぎないビターチョコから。
では、いただきまーす!
んんん…おいしーい!!
生クリームで口通りなめらか、ココアパウダーの風味がチョコの濃厚さを引き立てつつ、ほんのり苦めのビターなハーモニー!
我ながら、めっちゃ上手く出来たな!
犬彦さんにも早く食べて欲しいな。
そして俺と天音は、味見と称してチョコをおかわりをし、ばくばくと気が済むまで食べ続けた。(そんなこともあろうかと、毎年多めに作っているから問題ない)
そして、それぞれのお腹がチョコで満たされたところで、次にラッピングの作業に取りかかることにする。
事前に天音が100均で買ってきた、プレゼント用の小箱、カラフルなその小箱をテーブルの上に並べていき、順番にチョコを配置していく。(量が多いから、まじでチョコレート工場の作業風景みたいだ)
今度は天音が主体となって作業を進めて、俺はただ、その様子を監督みたいに眺めている。
きれいに、彩りよく、小箱の中にチョコレートを詰めていく天音。
その様子を監督していた俺は、ピンと直感が働いてイヤなことに気がついてしまった。
チョコレート工場らしく、均等に順番に、並ぶ小箱の中へチョコレートを配置しているのかと思いきや、天音のそれは違った。
いくつもある空きの小箱をほったらかして、天音はとりあえずひとつの小箱を完成させようとしているようだった。
天音が特別に気合いを入れて作っている、ナンバーワンなバレンタインのプレゼント…それは…。
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