② 2月の赤間部長は、チョコレート回収人

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 なんと2月14日に赤間部長を標的とした、チョコレートテロが社内で横行するようになったのである。  すなわち、会社のルールで上司へ贈答品を贈ることは禁止されている、だけどせっかくの年に一度のバレンタインデー、憧れの赤間部長へ記念にチョコレートを渡したい! …と考えた女性社員が個別に数名いたようで、勝手に14日の早朝、赤間部長のオフィスにチョコの包みを匿名のまま置き逃げする輩が現れたのであった。  それを出勤した折に発見した赤間部長は、大いに困ることになる。  会社のルール上、それは受け取るべきプレゼントではないのだが、せっかくの部下からの贈り物(誰なのかは分からないが)無下にすることはできない。  食べ物なのだから食べるしかないし、贈り物なのだからお返しもしなければならない(なにせ見るからに高級そうな箱に入ったチョコだし)だが、相手が誰なのか分からないから(しかも複数人いる)これ以上対応の仕様がない。  そういったジレンマは、仕事上では真面目な赤間部長をひどく困惑させ(そもそも合理的な思考力を持つ赤間部長には、匿名になってまでバレンタインのチョコを特攻で送りつける女性の心理が理解できず、ちょっと混乱している)そして、永多からすれば、こっちの方が問題だったのだが、このチョコレートテロは、社内ルールに従って赤間部長へバレンタインチョコを贈ることを諦めていた他の女性社員たちを、激怒させる羽目になったのだった。  どうやら女性の心理というものは、別にそれをきっかけに赤間部長へ愛の告白をして付き合いたいとかいうのではなく(そりゃ付き合えるものなら付き合いたいだろうが)せっかく一年に一度のイベントごとだから、思い出に赤間部長へチョコを贈りたい…そのプレゼントを贈るという行為そのものに楽しみを抱けるものであるらしいと、このときの事件を収めるときの過程で永多は悟った。  で、自分たちはルールに従って我慢をしたのに、テロ行為によって抜け駆けをし、勝手に赤間部長へバレンタインチョコを贈った匿名の何人かを、それを知った女性社員たちは恨むようになった。(大袈裟ではなく、マジで)  そのせいで社内で犯人探しが始まって(あるいはテロリスト探しだろうか?)なんとなく女性社員たちのあいだで空気がギスギスし始めた頃に、これはマズイと永多は察し、こんな提案を、赤間部長や女性社員たち…社内に向けて発信したのだった。  
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