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来年からは、赤間部長へのバレンタインチョコ贈与だけは解禁にしましょう。
こんなに社内の空気がギスギスして、業務に支障が出るくらいなら、そうした方が確実に有益です。
しかし、いくつかのルールを設定したいと思います。
①赤間部長へは直接渡さない。
オレが受付になりますので、チョコレートを渡したい該当者は、オレのところまで持ってきてもらい、一度オレが全員分を回収しまとめてから部長へとお渡しします。
なぜオレが窓口としてチョコレートを回収し、ワンクッション置いてから部長へお渡しするかというと、もちろん理由があります。
②それは、チョコレートの贈与者を匿名のままにするためです。
誰が赤間部長へプレゼントを贈ったのか、それが金額的にいくらくらいのものなのか、こういったことがはっきりしてしまうと、どうしても格差が発生します、それがまたしても女性社員間で不穏感を生むでしょうから(自分はもっと高くて良いものを部長に渡すぞ! 他のやつには負けたくない! とか)その危険性を回避するのが目的です。
③自分が赤間部長へチョコレートを渡したことは、赤間部長本人はもとより、社内の人間にも話さない。
誰からいくらくらいのプレゼントを貰ったのか知ってしまっては、赤間部長も気を遣ってしまうでしょう、そもそもプレゼントとは善意で渡すものなのですから、部長の心理的負担になれば本末転倒、プレゼントと言いつつ、自分の自己満足のためだけに部長にチョコを渡すというのであれば、クソ以外の行為の何ものでもありません、遊びの範囲内で思い出として楽しみたいのであれば、これくらいの枷は遵守すべきです。
…と、まるで、ビジネス上の会議で意見を述べるときのように、はきはきと永多がそう企画を提案したところで、赤間部長以外の社内の人間は(社長、専務、常務も含めて)一応納得した。
まあ、そのあたりが現実的な妥協点であるだろうと。
(ちなみにこの謎の話し合いは、大会議室で行われ、営業部メンバーはほぼ全員集結し、取締役たちや他部署の部長などはズームで参加している)
うんうんと皆が頷くなか、しかし問題の張本人である赤間部長だけがポツンと取り残されている。
「いや…君たち、盛り上がっているところ申し訳ないのだが、俺は…あまりチョコレートというものを食べないので、贈ってもらっても仕方がないというか…気持ちはありがたく受け取ったまま、そのイベントを辞退したいのだが…」
おずおずと赤間部長はそう自分の意見を口にしたのだが、速攻でその場にいた部下たちに言い返される。
「部長! ビターチョコなら甘くないですよ、ポリフェノールたっぷりで体にも良いんです!」
「甘いの苦手な人向けに、バレンタインデー用のおせんべいなんかもあるんですよ~」
「大丈夫です、部長には高校生の弟さんがいらっしゃいましたよね? 赤間部長にお渡ししたものを、弟さんに代わりに食べてもらえれば脳内的にそれで満足です!」
「おーい、君たちぃ~、今オレが匿名で公平性を保てれば部長にチョコをあげてもオッケーっていう妥協案を出したところだったのに、速攻で身バレするような発言するの止めてくれるかな~?」
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