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現在の文明では分からないモノは,
『オーパーツ』と呼ばれているが,
チサが拾ったオーパーツに関しては,ナイフの役割を持ち合わせていると,ライさんは推論した。
野菜や肉などは勿論のこと,石や草木も容易く切れてしまう。力をかけずに,すんなりと・・だ。
「それは凄いものを拾いましたね。肌身離さず,持っていた方が良い。チサどのを護ってくれるでしょうね」
「ゲンリュウさんに採集用のナイフ,作ってもらうのをお断りしなくっちゃ」
チサは,ライさんが紹介してくれるゲンリュウさんに断ろうとしようか,悩んでいた。
「いえ,種類によっては必要かと思います。オーパーツのナイフはたまたま用途が不明なだけで。現在はナイフとして使っていますが・・」
石も切れるオーパーツのナイフ。
チサはそのナイフでガイル石を剥がすか・・ギリギリのところで切り落とそうかと考えて,ジークに相談した。
「それは良い考えだけど,危険だと思います。気性の荒いガイル猪をおとなしくさせるには食事のあとに,身体を痺れさせる魔法か,もしくは雷系の魔法で『失 神』させている隙に剥がさなきゃいけない」
「ジークさん,雷系の魔法は使えますか?」
「・・まぁ,出来なくはないですが,威力は弱いと思います。」
「ライさんと,ジークさんが仕留める係ですね。ワタシはその間にガイル石を剥がして回ります。
おとりの役は,レグルくんとロイさんが最適ですね」
2人は,話しながら歩いている内に目的地に到着すると,樹木に這っている蔦の端を切り,集めていく。
去年のうちに集めておけば,必要な量の蔦が揃っただろう。山ぶどうがあれば,秋口に収穫したあと山ぶどうの蔓も収穫しておける。
籠作りに山ぶどうの蔓は人気の高い素材の1つで,柳の木やクルミの木の樹皮で作る籠も良いんだけど・・・
わがままは言えない。採集用の籠だもの,乱暴に扱わなければ,長く使えるし。
それに,薬草の採集でも必要だわ。
ジークとこえを掛け合いながら,蔦は必要の量が確保できた。あとは鉱山の近くまで行くのみとなる。
森の北側を道なりに歩いていくと,鉱山の入口に近付いていた。警備をするものが全くといって良いほど人がいない。
盗賊が居ないのが不思議で堪らない。ところどころに潜む獣たちに気を付けながら,鉱山の全体が見える場所を探す。
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