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小高い丘を見つけた2人は,
鉱山が深い谷のような地形になっていることに気が付いた。
「チサどの,見てください。この鉱山は谷のような地形になっていますね。
どれ位の深さなのかは判断しづらいですが,盗賊が間違って足を踏み入れたら」
「真っ逆さま・・・ということですね!」
チサは,つばをゴクリと飲んだ。
谷底に獣でも居ようもんなら,命が幾つあっても足りない。
フウガが調べた内容だと,鉱山は地上から地下深く,螺旋を描くように掘られており,質のいい柘榴石が産出される。
薔薇色の柘榴石や有色の柘榴石も産出可能だと記してあった。
鉱山以外の岩場にも,運が良ければ見つかるかも知れないとあった・・・
「運が良ければ・・・ですか。チサどのの父上の観察眼を信じましょう」
今は,是が非でも柘榴石を見つけなければならない。
鉱山周辺は柘榴石の地層と同じだと言うことが分かる。しかし,手当たり次第に岩を掘る訳にもいかず・・・
「あなたたち,ここで何しているの?」
見つかった!内心焦る2人は,後ろを振り返った。そこに居たのは,大きな背負い籠を担いだ少女がこえを掛けてきた。
身長は,1メートル20センチあるかないかの,小柄な少女はにこやかな笑みを浮かべて近付いてきた。
「ここに人間の男の人と,猫族の半人半獣の女の子が来るなんて,珍しいわね」
話しかけられて戸惑うチサは,少女に挨拶をした。
「こんにちは。ワタシたち森の薬局で働いているチサと,ジークと言います。
蔦を採りに森に入って,あちこち歩いていたら,この当たりまでたどり着いて・・」
ジークも尽かさず,
その場に合わせて話し出した。
「まさか,ここに人がいるとは思わなくて。急に声を掛けてきたからびっくりしたよ!
それにしても,あそこの谷は何か知ってるかい?」
少女はホビット族の1人で,背丈が低く長寿の種族だということ。
名前はシャーロット・リルといい,近隣の国から迫害をうけたホビット族が,ライさんの助けを受け,きらきら森へ移住をしてきたのだ。
自由気ままを愛し,自給自足の生活を送り,森に生える薬草や果樹の育苗や植樹,雑草の伐採もまた,彼女らホビット族にお願いしているのだという。
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