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「シャーロットちゃんに聞きたいのだけど!」
チサの問いに『リルって呼んで』と。
シャーロットだと,何だか照れくさいのだとリルが顔を真っ赤にして恥ずかしがった。
「ねぇ,リルちゃん。教えてほしいの!このあたりに柘榴石の採れる鉱山があって,それ以外の場所でも柘榴石は採れるモノなの?」
「ん~?その柘榴石がほしいの?」
「出来れば。ここの領主さまは,薬局のお得意様だけど,込み入った事情で鉱山以外の場所から採れるのなら,そこで採りたいなって」
「ライ先生の薬局で働いているなら,その証って持ってる?」
・・・証って?
チサとジークは,ライさんからその『証』となるモノをもらってはいない。
出がけにもらったのは,『音 玉』とお弁当用に持ってきたサンドイッチとチチルだけ。
あとは自前で買ったゲンリュウさんの採集ナイフ位だ。
チチルを見たリルは,『あるじゃん,チチルが』と言って嬉しそうに言う。
チチルは,そもそもきらきら森には自生していない果樹で,
住んでいた村の周辺に生えていた野生種のチチルを持ってきて,森に植えたものだと教えてくれた。
チチルは生命力の強い種類で,
綺麗な空気と栄養豊富な土や水で育つと,ものの数年で成長し,果実もたわわに実る。
皮を捲れば練乳を思わせる水蜜は,
ホビット族の大人も子供も大好きな果実なのだと,リルは嬉しそうにいうのだ。
果樹を増やし,生産が可能になったら,
街で売るか薬局に来るお客さんの飲み物に使ってもらう予定らしい。
「リルちゃんたちのお陰で,ワタシの家族のお腹を満たせたわ。ありがとう」
リルの働き者の手を,そっと握り締めた。チサの顔をじっと見つめ,リルは2人を連れて森の中へ連れていった。
「こっちこっち!」
リルが進む先にあるのは,沢山の岩がごろごろした沢だ。お陽さまの光が木のすき間から溢れてくる。
「ここの岩たちは,あそこの鉱山の地質と同じだって,鉱石を調べに来たおじさんが言ってたよ!ここで探してみたら?」
鉱石を調べに来た?
まさか・・・お父さまが?
チサは,フウガが書いていた内容と,ぴったり一致するものがこの沢にあるのだと知り,驚愕するのだった。
「チサどの。これは父上の書かれていた内容と・・」
「えぇ。おそらく同じだわ。試しに幾つか掘ってみましょう」
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