名無しのふたりと鉱石採集

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チサが沢で柘榴石を探している頃, レグルはロイの背中に乗って,上空からガイル猪を探していた。 「初めてロイさんの背中に乗せてもらったけど,超~怖ぇよ」 「レグル,我慢しろ。あの猪を探しているんだから,お前もちゃんと探せよ!」 陸に足をつけて生活していたレグルだが,空を飛んだことが無かったのか? 高所恐怖症になりかけていた。 「兄貴に変わってもらえば良かったよ~」 ロイは,嘆いても仕方がないとレグルに言い聞かせた。レグルもまた,チサの言いつけを守ろうと,ロイの背中で目を凝らして探している。 辺りを見回しても,きらきら森はとてつもなく広大だ。 人の住む街とは違った魅力が,ライさんを惹き付ける『理 由』があったのか? それは,本人しか知らない。 それから数キロ空を飛んでいたら, レグルが視線の先にガイル猪を見つけたと,教えた。 「ロイさん,あれっす!あの土ぼこりがそうっす!」 結構,あいつら移動してるな。 この先にあるのは,イーファ洞窟のある一帯の筈だ。 天然の冷蔵庫と言われるほど,外の温度との差が大きい。雑食性の高い獣なため,森の生態系を崩す恐れがあるからだ。 ロイの住む,ロッヂの近くにいるホビット族の家族も,畑で自ら育てた野菜が食べられてしまい,仲間内でも被害が出ていると嘆いていた。 食べ物の豊かな土地では,繁殖期の頻度が高くなる・・昔,ロイは学校の授業で教師が言っていたのを思い出した。 「繁殖期だって言うなら,合点がいくか。これ以上増えたら,ホビットの みんなも,森の植物もまずい事になる。『間引いて』調整するか」 生きていくために,ガイル猪は食べているだけだ。獣人も人間もそれは変わらない。 しかし,食べる量が問題なのだ。
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