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「わぁ~すごい!チサちゃん,もう見つけたの?」
リルの黄色い声が,岩場全体に広がった。
傍で探していたジークも同様な声をあげている。
「たまたまよ。探そうとしていたら,
その場所が『光って』見えただけ」
そこかしこにある岩や石を拾っては,オーパーツのナイフで削っていく。
焦る気持ちが先走り,祈る気持ちで岩を見ていたら・・
ボンヤリとした光が,数か所だけ淡く『光って』見えたのだ。
リルやジークには見えなかったようで,とても羨ましがっていた。
見つけたのはオレンジ色の柘榴石や,森の色を思わせる緑色の柘榴石が,小指の一関節の半分の大きさの石が出てきた。
「綺麗な色・・・これで薔薇色の柘榴石が出てきてくれればなぁ~」
とチサは小さく吐露した。
採集をした初日に,有色の柘榴石を発見した2人は,かなりの時間を費やしたのにも気づかず,昼を過ぎた辺りでお腹が急に鳴り出した。
キュルキュルキュル~
しかし,その音はチサからでもジークからでもなく,リルのお腹から響いてきた
「良かったら,一緒に食べましょう。ジークさんもそろそろ昼ごはんにしないと」
「そんなに時間が過ぎていたとは。リル,済まなかったな!」
チサたち3人は,岩場の平たい場所でサンドイッチとチチルを取り出し,分け合って食べている。
木々が,お陽さまの熱を遮ってはいるものの,しゃがみながらの作業は体力を使う。
確かな手応えを感じたチサは,
ライさんに良い報告が出来ると,心ならず浮かれていた。
食事をするジークは,近くから感じる視線を感じて警戒していた。
距離は,遠過ぎず近過ぎず。一定の距離を取り,様子を伺っているようだ。
腰に下げている短刀を片手で触れながら,身体を動かさずじっとしている。
ただならぬ雰囲気に気づいたチサも,
険しい顔つきのジークにこえを掛けづらくなっている。
リルは,そんな2人の事にはお構いなしに,能天気にサンドイッチを頬張っている。
大した大物だと,チサはリルを見やる。
気配がやがて消え去ると,緊張の糸が切れたジークが,ため息をひとつ吐いて『疲れた・・』と嘆いた。
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