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ガイル猪掃討作戦
陽がゆっくりと傾きだした,昼の3時。
薬局にたどり着いたチサとジークは,
扉を開けて入ってきた。
中にいたのは,赤い髪をゆらゆらと揺らめかせた女性が1人,レジのあるテーブルの,内側にある椅子に座っていた。
「ホノカさん!火華の花を採集しに,行かれなかったんですか?」
火蜥蜴族のホノカは,『炎』を自在に扱える女性で,彼女が室内にいると,寒い部屋が暖かくなる。
身体も心も一緒に。
ホノカ自身,必要が無ければ話さない。
最低限でしか話さないが,チサが薬局に勤めだしたあたりから,少しずつ話が増え出した。
「チサちゃん,ジークさん,お帰り。ついさっき,戻ってきたばかりなの。火華の花,あと1週間経たないと花が開かないわ」
火華の花の生息地は,セレベスタの南・ゼアの街の外れに群生している。
海に面しているのと,ゼア山という休火山があるため,温泉の恩恵を与えられている。
温泉街としても有名でセレベスタの王都からの観光客で賑わっているところだ。
「ホノカさん,ライさんは?」
「ん~?お手洗いだよ~」
ライさんはハンカチで手を拭きながら,なに食わぬ顔をして戻ってきた。
「2人とも帰ってきたか!蔦も随分と集めてきたもんだ。これで採集用の籠が編めそうだ」
ライさんの営業スマイルは,いつも通り輝いている
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