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台所の手押しポンプで水を汲み,
顔と手を洗った。
『晩ごはんが済んだら,作戦会議を開くぞ!』
ライさんのかけ声に,2人は洗濯物とお風呂そうじ,晩ごはんの仕度を始める準備をした。
「ホノカ,一緒にチサを手伝ってやれるか?」
「えぇ,それは構わないわ。台所の火焔石の充填でもしておこうかな!」
チサの後を追っていったホノカをみて,
「同性の友だちは作った方がいいぞ!」と,小さくつぶやいた。
ホノカが手伝ってくれたお陰で,ジークもチサも仕事が捗った。
煮炊きするのに必要な火焔石に『炎』を注ぎ込んだお陰もあって,石自体が紅く発色している。
「ホノカさん,いつもありがとうございます」
いいよ~と照れながらいうホノカの傍で,ジークが大きめの火焔石をいくつも取り出した。
初めは不思議そうな顔をしていたが,ジークの説明で納得した・・
「ホノカどの,ついでで申し訳ないのだが,この火焔石にも『炎』を注ぎ込んではもらえないだろうか?
あそこにある,オーブンを使いたいのだ。ここには火焔石が4個しかない。自前の火焔石があれば,大量のパンや焼き菓子が作れるのでな!」
まだ,気にしているんだ・・・
ジークはレグルと共に雇ってもらったことで,食料の枯渇を気にしていたのだ。
レグルが食べ盛りで,
すぐお腹を空かせてしまう。
昨夜も出された晩ごはんが足りなくて,チサの分を減らして渡していたのを,ジークは見ていたのだ。
以前,傭兵の仕事で各地を転々としていた時,手が器用だったジークさんたちが,寝泊まりしていたパン屋さんで作り方を教わっていたと・・・
「寝泊まりさせてもらったパン屋の大将から手ほどきを受けていて『パン種』の作り方からパンの作り方まで教えてもらったんだ。
陽の目が見られて良かったよ」
ジークさんの,優しい笑顔が垣間見た瞬間だった。
夕方に差し迫った頃に,ようやくロイとレグルが帰ってきた。レグルなんて,身体がフラフラし過ぎて床にへばり付きそうだ。
苦笑いするロイ。飛行酔いをして,バテる寸前だったと話しているが,当の本人は『違う~』とばかりに首を横に振る。
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