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仕事がひと段落すると,チサは昼食作りに取りかかった。
ジークの手際の良さのお陰であっという間に終わり,明後日のガイル猪狩りのために必要なモノを揃えるため,食事を取らずに出掛けようと,身仕度を整えていた。
ロイが作ってくれた燻製の鱒を油紙に包み,スノウが今朝がた収穫しておいた氷華桃や草苺,ジークに頼んで多めに作ってもらったパンをリュックに詰め込み,
「ライさん,ゲンリュウさんの所に行ってきま~す!」
扉を開けようとすると,ライさんは食べかけていた手を止め,チサに手紙を渡した。
「ほら,これを忘れてるぞ!ゲンリュウは人見知りでな。オレからだと言えば,すんなりと対応してくれるだろう」
「はい,分かりました」
手紙をポーチにしまうと,ホノカが昼ごはんのおかずをパンに挟んで,紙に包んでくれた。
「チサちゃん,お行儀が良くないけど,歩きながらでも食べられるように,パンに挟んでおいたわ!」
「朝ごはんをしっかり頂いていたから,みなさんの分・・」
「駄目です!外は陽射しが強いし,体力も削られるの!倒れたら大変でしょ」
ホノカから手渡されたパンを持って,薬局を後にする。スノウに書いてもらった地図を頼りに,一路ゲンリュウの住まう家へと向かう。
スノウの書く地図は,要所要所目印となるモノがあって分かりやすい。モノの15分歩いたのか?やがて,空に白い煙が立ち上がっているのが見えてきた。
「あれかな?」
チサは再度地図を確認し,ゲンリュウの家を目指す。
ライさん曰く,煉瓦と丸太を使った家だと言い,途中で石を積んだ塀と,自家菜園が見えてきたら,ゲンリュウの家なのだと・・
歩き進めていくうちに,石を積んだ塀が姿を現した。ようやくゲンリュウの家に辿り着いたようだ。
何処からか?ピィ~ピィ~と鳴く獣のこえが響いていた。チサはあたりを見回しても見つからず,声の聞こえる方角へ向かう。
「お兄ちゃん,どうしよう。この子,怪我してるよ。お父さんに言ったら,始末されちゃう」
ゲンリュウの娘なのだろう?兄に向かって話している。兄もまた,怪我をした動物に対し,
「ガイル猪の子供が傍にいたら,父さんに仕留められる。かといって,怪我をしているこの子を放っておいたら,森がもっと荒れる。
ホビットの人たちの作物を荒らしているんだ!やっぱり・・・父さんを」
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