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「本日お部屋、6階620号室になります。ごゆっくりお過ごし下さいませ」
ーーーおはるちゃんから過去の話を聞いて数日が経った。
あの日からは一切、あの時の話はしていない。
もちろん今まで通り、お昼は一緒に食べて、休憩の時間にはおはるちゃんが私の元に遊びにきたりもしている。
その度に、おはるちゃんもいつもと変わらない笑顔でいるのだけれども...
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
ボーッとフロントに立っていたら、夜勤の咲本さんが登場した。
ふと時計を見ると時刻は17時ちょうど。
...そうか、もうこんな時間だったのか。
「なんか、雨降りそうだよね」
「え?あー、本当ですね」
咲本さんに言われ窓の外を見ると、確かにどんよりとした雲が空一面を覆っている。
なんだろう...。こんな日はなんだか少しだけ、嫌な予感がしてしまう。
「久島様、お帰りですか?」
声がする方を振り返ると、いつの間にか咲本さんがいるカウンターに久島さんの姿があった。
今日は珍しくお昼過ぎの早い時間からチェックインをして客室にいたから、おはるちゃんも喜んでいたのだれど...。
手には来た時同様、黒のキャリーケースを持っている。
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