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3話目
私とヒナタは2階の廊下を歩いていた。
「ここは、女子部屋と男子部屋、あとはお風呂みたいだね」
女子部屋には数人の荷物が置いてあった。
「あれは…?」
奇抜なバックが置いある。おそらくミハルさんのだろう。一体何が入っているんだか。まさか暴力的なものとか入ってないよね…?こちらはそれ以外特に気になるものは無かった。
「ヒナタ、そっちはー?」
男子部屋を調べていたヒナタに声を掛けた。
「だから、うるさい。そんな声出さなくても聞こえてる。少し気になるものがあったけどそれ以外はあんまり無いかな」
ヒナタが男子部屋から顔を出した。
「ほら、こっち来て」
手招きしながら部屋に入っていった。
「いや…流石にさぁ…うーん」
気になる…!気になるけど!男子部屋に入るのはちょっとなぁ……
「いや!呼んでたし!うん!」
見つかったらヒナタのせいにしようと思いつつ男子部屋に入った。そこはあまり女子部屋と大差なかった。
「やっと来た、何グズグズしてんの」
呆れた様子でヒナタが声を掛けてきた。
「ほら、これ。なんか付いてる」
指差した先には壁があった。その壁をよく見ると小さく傷が付いている。
「もしかして、これが気になったってやつ?ここ古い建物みたいだし…これぐらいあるんじゃないー?なんでこれが気になったの?」
私は、疑問に思った。なーんで、こんなものが気になるんだろう?
「いや、そうじゃなくてさ、その傷の大きさからして何かを刺したかんじの傷に見えるんだ。それこそ…包丁とかの凶器で刺した様な、ね」
ヒナタが若干、怖がらせに来た。いや……違う。違う、ヒナタは…冗談で言ってるんだ。
「あの事」を知るわけないじゃないか。赤い物が目に写るなんて…事。
「え?あっと…そんなに怖がらないでよ。あ、いやごめん…」
私がどんな顔をしていたのかは分からないが若干焦った様に謝ってきた。ヒナタはちょっとした驚かせる為に言ってきたのかもしれない。でも、私は…
「えっ?私、変な顔してた?」
私は無理やり笑顔を作った。バレちゃいけないんだ。そんなの許されない。
「ちょっとだけね。まぁ……何もないならいいけど」
僅かに違和感を覚えたのだろう。しかし彼は何も聞かなかった。それが、心地良かった。
「一先ず、一度リビングに戻ろう。みんな戻ってるだろうしね」
そうヒナタが言って、私達は部屋を後にした。
リビングに戻るとほぼ全員が揃っていた。
「おっ、君達も来たか。後はサヨネさんとミハルさんだけだね」
レンさんのいう通りその2人以外は揃っていた。
「僕が呼びに行こうか?あの2人は確か3階を調べていたと思うけど」
ユキナさんがそう言った。
「そうだね、集まるなら早めの方が良いと思うけど。まぁ、1人で行くのはやめといた方がいいんじゃない?」
ショウさんも賛成した様だ。
「じゃあ、俺とそいつで見てくるからお前らはそこで待ってて」
マコトさんがそう言って、ユキナさんと向かっていった。
「な、なんだか嫌な予感がします」
リンカちゃんは怖がっている様だった。
「私は最初に言ったように共感覚の持ち主なんです。集中すれば20メートルの範囲でなら色が見えるんですけど先程からミハルさんとサヨネさんの色が見えないんですよ…」
彼女の言葉が一層みんなの不安を煽った。
数分後、慌てた様子でマコトさんが降りてきた。
「あ…あっ……し…しん………!」
全然言葉になってない。
「どうしたんですか!?ユキナさんは?」
私が慌てて尋ねるも、上を指差して何か言うばかりで何も分からない。すると、
「や、ヤバイね…」
下に、ユキナさんが降りてきた。
「死んでるよ…血塗れで……」
言葉が、声が震えているのが分かった。
「…一先ず、みんなで行こうか?」
ハジメさんがそう提案した。だけど
「いっ、嫌です!死体なんですよね!?見たくもないです!」
リンカちゃんが泣きながら反論した。
「お、俺も…ちょっと……」
ハルトさんも、腰が抜けた様だった。
「行ける人だけで、とりあえず行こうか?」
ユキナさんがそういって、階段を登っていった。私も後に続く。またか。いつもそうだ。私のせいで、沢山の人が死んだのだから。それだけじゃない、私自身も…
結局、マコトさんとリンカちゃんとハルトさんは下で待っているらしい。
3階は大きな部屋が1つあるだけだ。廊下を歩くとミシミシと音がする。ここに来るまでみんな無言だった。色んな気持ちだった。私は、『また』死体を見ることになるのだろう。もう、何度も見た死体。その映像はどれだけ掻き消そうとしても消える事はなかった。
「それじゃ、開けるよ…」
ユキナさんがそう言って扉を開けた。
そこには異臭が漂っていた。そして、そこには2人の人間が、無残に刺し殺された跡があった。
「っ……!」
もう、何度も見た光景の筈だった。死んだ人が違くても。でも、慣れない。
あの映像が嫌でも頭の中で再生される。
【回想】
学校が終わって、家に帰ると鍵が開いていた。嫌な予感がしつつ扉をゆっくり開けた。
そこには包丁で刺された両親の姿があった。父親は、今日偶然会社が休みだったのだ。そして家が荒らされていた。
警察は、強盗殺人だとして調査してくれているが未だに捕まっていない。シュウヤ兄さんは慰めてくれたんだっけ。大丈夫だって。それすらも今はもう無いのに。
ーーーー
ダメだダメだダメだ
今はそうじゃない、なんとか意識を現実に戻した。2人は血塗れで倒れていて、もう死んでいるのは明らかだった。
「うっ、うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!」
それを見てショウさんは下に降りていった。
「これは…中々だね……」
ヒナタも鼻辺りを抑えて、顔をしかめていた。やっぱり、何度見ても、遺体なんて慣れるもんじゃない。
「…リビングに戻ろうか。」
青ざめた顔のレンさんの一言で一度戻る事にした。
リビングには怯えた表情のリンカちゃんとマコトさん、ハルトさん、ショウさんが居た。遺体を実際に見たマコトさんとショウさんは特に震えていた。
「あ…どうでしたか…?」
リンカちゃんの声に誰も答えなかった。その無言の回答で察したのだろう。絶望の表情をしていた。
「…どうするんだよ、これから!殺人鬼のいる建物で一緒に過ごすって言うのか!?というかどうしたらここから出られるんだよ!?クッソ!!」
ハルトさんの疑問に答えられる人は居なかった。
「出口の様なものを見つけた人は?」
ヒナタのその質問にも答えられる人も居なかった。
「困ったね…これからどうしよう?」
「一先ず、分かっているのはこの建物から出る方法は無いってこと、そして殺人が起きた事。どちらも絶望的だね。犯人を見つけるの?それとも出口を?」
比較的この中では落ち着いているレンさんとヒナタは話し合い始めた。私は何となくだけど、ここの建物からは出られない様な気がする。だけど、
「……見つけた方が良いと思います。」
私の発言に全員の目が向くのが分かる。期待なのかそれは分からない。ぼっーとした様な目も中にはあった。
「ここの建物の出口です。私は絶対ここから出るんだ。」
私は強く、そう言った。
「そうですよね。勿論、お2人を殺した犯人も許せません。でも、まずは自分の身の安全を守るのが先です。」
リンカちゃんが私の意見に賛成してくれた。
「それで良い。けどよ!二人一組で動くのは無しだ!そいつが殺人鬼なら俺が殺されかれねぇからな。」
ハルトさんはそう鋭く言って何処かへと行ってしまった。
「まぁ、そうかもね。相方が殺人鬼の可能性もある訳だし。俺もそうしようかな。」
ショウさんもゆっくり動き始めた。それに合わさる様にバラバラと移動していく。さて、私も捜索を続けようかな。
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