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7話目
「っ…んっ……?」
頭はあまり痛くない。多分、1時間ぐらいしか寝ていないのだろう。
「ここは…何処だろう?」
体を起こして辺りを見回すとなにやら12個の机の様なものが円状に並んでいる。他の人も寝ている様だ。近場のヒナタを叩き起こした。
「起きてー、起きてー!!!!」
「んー…何さー煩いなぁ。あぁ、君か。」
眠たそうに、そしてダルそうにヒナタは起き上がった。
「ここ何処?変な所だなぁ。まぁ一先ず他の人を起こそうか。」
そう言って、ヒナタはみんなを起こし始めた。私も近くのリンカちゃんを揺らした。
「リンカちゃんー、起きてー!」
「ふぁーーー、んー、何ー?…っは!?あ、ありがとうございます!!」
リンカちゃんが凄い勢いで起きた。そして他の人も徐々に起きてきた。全員が
「ここは何処?」
と聞いてきたが、誰も答えられる人は居なかった。
「ドアも開かないみたい。鍵が掛かってる。」
ヒナタのその答えに全員の顔が曇った。
番号式の鍵らしい。
「番号のヒントか答えを探しましょう!」
私は空元気だと分かっていながらも、明るく言った。
「ここにはお風呂もトイレも無いみたいです。そうなるとずっとここに閉じ込めておくとは考えにくいです。何処かにあると思います。どちらにせいよ、探索をしてみましょう?」
私のそのセリフに、全員が頷いた。
「そうだな、一先ず番号を探さねぇとどうしようもねーよ」
ハルトさんのセリフを皮切りにバラバラになった。さて、私も探すか。端には本棚が置いてある。ただ、その中には本が数冊しか入って居なかった。
「変だな……3階の本棚はパンパンに入ってたのに。……ん?これは?」
本ではない、ノートの様なものが置いてある。表紙には『日記』と書かれている。誰かのものだろうか?かなり新しそうだ、5年程しか使ってないように見える。
「どうしよう…」
いくら置いてあったとはいえ、勝手に他人のノートを読んでいいものだろうか?
「んー…怒られたら謝ろう。」
そう自分に言い聞かせて、私はページをめくった。
『好きになった。見た瞬間から、恋に落ちたんだ。だけど、手紙を送る事はしない。ひっそりと見るだけ。それだけでも、幸せだ』
………これは、恋愛の話か?私は次のページをめくった。
『好きになった事に後悔なんてしてない。だけど、悲しそうな顔を時折するんだ。不幸にさせた人間がいる。』
…これは…そういえば一人称も出ていないから、この日記を書いたのが男か女かも分からないな。なんとなく、男っぽい書き方だけど。次のページ。
『好きな人を不幸にさせた人間を調べ上げた。復讐してやる。殺してやる。きっと、喜んでくれるはずだ。アイツらは何も知らない。殺してやる。全員殺して、思い知らせてやる。ずっと、追いかけてきた。いわゆるストーカーなのかもしれない。それでもいい、思いなんて伝わらなくて良い。褒めて欲しいんだ。好きな人に』
次のページの日記の日付は昨日だった。
『やっと、やっと殺せるチャンスが巡ってきた。許さない、好きな人を邪魔する奴は全員殺してやる。』
そこで、ページは白紙になっていた。
「…これって?」
恐らくサヨネの日記ではない。とすると、これは犯人の日記?でも、どうしてこんなものを置いたのだろう?
不幸にさせた人間?そんな訳ないじゃん…。私は微かに震えていた。自分の予想が当たっているのなら、××はストーカーされていた…?
だけど、確かにそうだった。少なくともレンさんとサヨネちゃんは私の両親を殺した。そして、チサトさんは私の兄と付き合っていたのに三股していた。両方とも私に関係する事だ。
「じゃあ、犯人は男性……?」
いや、共犯で女性がいる可能性もあるはずだ。気は抜けない。
「これは持っておこう」
そして、私は本棚の本を全て調べ始めた。
「ん?『仮面女』?面白そー。こっちは、『ナイフと体』?何このそそられる題名!『血塗れのポエム』『復讐魔のシアター』『人造人間の世界観』なにこの私好みのストーリーは。ってん?なんだこれ」
見ると、表紙には1から5までの数字が書かれている。『ナイフと体』は1、『復讐魔のシアター』は2、『仮面女』は3、『人造人間の世界観』は4、『血塗れのポエム』は5と書かれている。
「よく分かんないなぁ?あれっ?」
もう一冊上の方にある。
「ぐぬぬ、届かない……!!」
梯子か椅子が無いだろうか?そう思った時、
「何してんの?」
「うわっ!?びっくりした!」
ヒナタが後ろから声を掛けてきた。
「さっきから、なんかぶつくさ言ってるからさ。気になってたんだけど。何か見つけたの?それともあの本が取れないとか?」
薄く笑っているから、からかってる。
「後者だよ…そーだよ、届かないんだよ!悪いか!」
……『届いてはいけない』。それは私ではない。
「ふーん」
興味無さそうに、ヒョイと本を取った。
「ほら、読みたかったんでしょ?」
「あ・り・が・と・う!!」
イライラしていた私は思いっきり受け取った。
「イラつく女はモテないよー…まぁ、僕には関係無いけどさ。そもそも、君がここから出られるかすら怪しいけどね。」
こいつ…薄く笑ってからかうの好きだな。相変わらずSな奴だ。私はムッとしたが、とりあえず黙っておいた。
「ふーん…言い返さないんだー。意外と気弱いの?それとも僕と話すのが面倒?」
………。最後の方はなんだか心配そうな感じがした。やっぱりこいつは……。
「さぁね、とにかく私は他の所を調べるから!」
私はそう言ってヒナタから離れた。そういえば、取ってもらった本は…『鬼の再現物語』?
これって、3階の本棚にもあった奴じゃ?偶然か?いや、それは無いだろう。
そう思って本をペラペラめくってみると、ペラッと1枚紙が落ちた。
「あっ…落としちゃった…?なんだこれ、なんか書いてある。何?『母音を読め、題の初めが答えとなる』か。母音ってA、I、U、E、Oの事だよね?」
私はよく分からなかったが、とりあえずこの本は持っておこう。そういえば、ヒナタが開かないと言っていたドアを見に行くか。私は扉に向かった。
「うーん、困りましたね。出口が開きません」
そこには、リンカちゃんが困り顔で扉の前に立っていた。ゴチャゴチャやってなんとか開けようとしているらしい。
「リンカちゃん、開かないの?」
「あっ、どうも…はいどうしても開かなくて。流石に力技じゃ開きませんよね。」
私はかなり力は強いが、今この場で使うのは正直あまり良くないと思った。……これ以上疑いを持たれてはいけない。
「成る程ね、少し鍵を見せてもらっても良い?」
「えっ、あっはいどうぞ。」
それは5つの数字を入れるタイプのものだった。それぞれ、1から9までありこれを全通りやると日が暮れそうだ。
何かヒントがないか…と考えていると、手に持っていた2冊の本を見る。
……そういえば、本棚は鬼の再現物語と日記帳を抜けば5冊だったな。それに数字も書かれていたようだし。もしかしたらそれが何か関係あるのかも?
いや……そういえば鬼の再現物語から紙が出て来たよな?そこには確か…
私はごそごそと先程の紙を取り出した。
『母音を読め、題の初めが答えとなる』
うーん、つまり?母音を読む、題名の最初を読む?
「もしかして‥13122?かな」
「えっ!?分かったんですか?」
リンカちゃんの大声に周りの人が一斉にこちらを見る。
「どうしたのー?なんか分かったーのー?」
チサトさんが喋りながらこちらに来た。
「あっ、えっと……もしかしたら鍵の番号が分かったかもしれません」
私は、彼女相手にも落ち着いてそう話した。外に出してはいけない。
「へー、凄いね。説明お願いしてもいいか?俺は全然分からなかったし」
マコトさんに急かされて私は話した。
「はい、まず鍵の番号は本棚にヒントがありました。本棚の本には6冊の本がありました。それこそがヒントだったんです。本の表紙には題名と番号が振られていました。1から5までの番号です。これは読む順番でした」
私は日記の事は伏せて話し始めた。あれは本だけど、小説などの類とは違うだろう。
「読む順番?どういう事だ?」
ハルトさんがまるで分からないという顔をした。
「ええっと、本が6冊あったのですがそのうち1冊には数字が書かれておらず代わりに紙が出て来ました。そこには『母音を読め、題の初めが答えとなる』そう書かれていました。そこでピンと来たんです。本の題名の一番初めの文字の母音を読めばいいんじゃ無いかって。」
「おー、成る程!そういう事だったんですね。」
リンカちゃんが目を大きく見開いて言った。
「そして、本の表紙に書かれている数字は番号順に読むという事です。『ナイフと体』は1、つまり母音はアなので1『復讐魔のシアター』は2、母音はウなので3、『仮面女』は3、母音はアなので1、『人造人間の世界観』は4、母音はイで2、『血塗れのポエム』は5、母音はイで2。これを合わせれば13122という数字が浮かび上がるんです。多分、合ってる筈ですが」
私の推理に、一同は黙りこくった。そして、ちらちらと私を見る。……言いたい事はそういう事なんだろう。
「ねー、あなたさ、もしかして黒幕っていうか犯人ー?なんじゃないの?」
みんなを代表するようにチサトさんが言った。疑心暗鬼の目が私を突き刺す。
向けていないのはリンカちゃんとヒナタぐらいだった。
「ちょっと待ってください!彼女はこの鍵の謎を解いてくれたんですよ?ミステリー好きだとも言ってましたし、あり得るんじゃないですか?彼女が居なかったら、謎を解くのも時間掛かったと思います!」
リンカちゃんが必死にフォローしてくれる。だけど、
「まぁ、黒幕なら何処に何があるか分かるからな」
ハルトさんの一言を肯定するようにみんなが押し黙った。
「っ…そんな皆さん……!」
リンカちゃんが信じられないという顔をした。
「いいよ、リンカちゃん。ありがとう。何言ってももう、誰も信じないだろうから」
私は少しだけ笑ってそう言った。別に誰かに信頼される為に私は生きてるわけじゃない。親を殺されて、兄を殺されて、友人を自殺へ追い込んだ人物。それが、この中にいるのかも知れないしもう死んでいるのかも知れない。
私は、この人たちの過去を暴くために此処にいる。
「信じないのなら、それでも構いません。私は皆さんを平等に疑います」
「ふーん、それで良いのー?あなたが生きづらくなるだけだよー?まぁ、関係ないけどねー。ほらー早く出よーよー」
チサトさんがのんびりと聞いた。彼女と話し合う必要はない。意味も、理由も無い。
私は無言で番号を入れた。
「ガチャ」
扉が開く音がした。
「これで、出られるーーやったねー」
「おっ、来た来た。あ、お前はもう俺に近付くなよ!」
チサトさんとハルトさんがそう言って出ようとした時だ。
「えっ!?何これ!?」
チサトさんが驚きの声をあげた。
「はぁ?何だよこれ、俺達を出さない気かよ!」
ハルトさんも怒っているようだ。私も扉の先へと進んだ。
そこで見たのは、部屋だった。
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