『黒いマスク』

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『黒いマスク』

『黒いマスク』 最近さ、マスクしてる人が多い……っていうか、それがデフォでしょ。 しかも、ちょっと前までは白い生地か、せいぜい薄いピンク色の生地のマスクしか見なかったけど、今は柄があったり、色がついてたりする。 で、話は変わって、ついこないだの深夜なんだけど。俺はコンビニに向かってた。 夜中に喉乾いて目が覚めて、家に飲み物がなかったから、どうせならコンビニまで行って、ついでに小腹を満たす物も買って来よう、って考えたわけよ。 コンビニへの道は、大通りを通る行き方と路地を通る行き方があって、路地のほうが近道だから、俺はいつも通りそっちの道を歩いてた。 すると、向こうから歩いて来る人が見えた。 細身の、若いっぽい兄ちゃんで、黒いマスクをしている。 「咳エチケットか。ちゃんとしてるなあ」 って何とはなしに横目に見ながらすれ違う瞬間、そうじゃないって気づいた。 黒いマスクと思ってた顔の下半分なんだが、そこには何もなかった。 なんというか、焦げて、崩れたみたいな空洞だったんだ。 変な汗が出て、瞬間、ツンとした正体の分からない刺激臭が鼻の奥を突き、咄嗟に振り向いてしまったが、路地には誰も居なかった。 それからは、昼間でもその路地は通ってない。 <終>
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