『スプーン』

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『スプーン』

ある休日のお昼時。 俺は自分の部屋で、テレビ見ながらカレー食ってた。 テレビもなんとなくつけてたから、そんな熱心に見てたわけじゃ ないんだけど、ふと何か、視界に違和感を覚えた。 残像というか、視界の端に何か映った感じというか……何かわからないが、たしかに違和感が残っていた。 手を止めて違和感の正体を探るが、部屋の中に変化はなし。虫が飛んでた、ってこともないし、テレビも特別気に留めるような内容じゃない。 それで結局、気のせいってことにして無理やり自分を納得させて、再びカレーを食べ始めたんだけど――その直後、違和感の正体に気づいた。 カレーを口に運んだあとの、スプーンに映った自分が、自分じゃなかった。 スプーンの映り込みなんてそもそもが歪むもんだし、顔つきとか詳細まではわからないけど、少なくとも俺は真っ黒な長髪なんかじゃない。 えっ、てうろたえた一瞬に、それは自分の顔に戻ってた。 見間違いだったかもしれないけど、ビビった話。 <終>
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