『迫ってくる笑い声』

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『迫ってくる笑い声』

 昨日の夜、22時くらいに部屋でゴロゴロしながらスマホ見てたら、外から「アッハッハッハッハ」って女の人の笑い声が聞こえてきた。  すんごい楽しそう――っていうか、ツボ入っちゃった感じの笑い方で、窓閉めた部屋で、イヤホンつけて動画見てる俺に聴こえるくらいだから、たぶん相当でかい声だった。  俺の家の周りは近くに飲み屋が何軒かあるせいか普段から酔っ払いが多いし、飲み会後の人達が、俺の家の真ん前で謎の万歳三唱をやってたりするから、俺は、女の人も飲み会終わってご機嫌なのかな~くらいに思って、気にせず動画を見てた。  で、10分くらい経って、トイレ行きたくなったから一旦動画を止めたんだけど、外でまだ女の人が笑ってる。  まあ酔っ払いは中々解散しないから、そんな珍しいことでもないんだけど……ちょっと注意して聞いてみると、笑ってるのは、その女の人ひとりっぽい事に気がついた。他の人の笑い声とか、話し声みたいなものは全然聞こえてこない。  そんでさすがに「ちょっと変だな」と思いはしたんだけどさ。  もしかしたら電話してんのかもしれないし、そうじゃなかったとしても変な人もそこそこ居る地域だしな、ってことでさほど深く考えず、とりあえずトイレに行こうと立ち上がった。  その瞬間、笑い声が急に近くなった。  一瞬のことで、何が起きたのか分からないけど、女の人は明らかにさっき居たところよりも俺の家に近いところで笑ってる。  何これ? ってテンパってるうちに笑い声はどんどん近づいてきて、もう、ベランダの前、カーテンのすぐ向こうで笑ってるくらいの距離になって、「なんで? 意味わかんない、うち二階なんですけど?」って固まってたら、 「アッハッハッハッハ」って笑い声が両耳の横を通り過ぎていった。  その時はめちゃくちゃビビったけど、なんか本当に楽しそうな笑い方だったからあんまり怖さは残らなかったし、トイレはちゃんと間に合ったからまあいっか、って思うようにしてる。 <終>
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