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『姉の肝試し』
姉から聞いた話です。
実話なので、現場となった場所ももちろん実在するのですが、内容が内容だけに、はっきりとは書けないのをご了承ください。
姉は学生の頃、友達と二人で廃ホテルに肝試しに行った事があるそうです。
千葉県の廃ホテルなのですが、肝だめしでは有名なスポットなので、詳しい人ならピンと来ちゃうかもしれないですね。
元がホテルだけあって、かなり広く、姉たちは怖がりながらも結構な時間をかけて探索したそうです。
夜に行ったので館内は当然暗く、シンとしていて、建物が古いせいか時折どこかで何かが軋むような音がかすかに響いてきます。
壁や天井、床には、妙なラクガキや、ラクガキなのかシミなのか正体の分からない黒ずみなどが多くあり、中には首吊り用らしきヒモが垂れ下がっている場所もあったりして相当気味が悪かったそうですが、当時すでにそこは肝だめしスポットとして有名だったので、「先に来た人たちのイタズラだよね」などと言い合って姉たちは探索を続けました。
それからしばらく歩き続け、ちょうど「キリの良いところで引き上げようか」なんて話が出てきた頃です。
ロッカーがずらっと並んだ、更衣室らしき場所に行き当たりました。
なんとなく怖さと飽きが拮抗してきていた姉たちは、折り返すには良いポイントな気がして「一応ここだけ見て終わろうか」と言いながら、半分惰性でチラっと部屋を覗いたそうです。
ところが次の瞬間、二人ともが言葉を失いました。
その部屋は、それまで見てきた部屋同様かなり乱雑で、ホコリや油にまみれ元の形がわからなくなった物などがそこら中に転がっていましたが、暗がりの中、赤いスプレーで書かれた×マークだけが、何故か強烈に、目に飛び込んできたのだそうです。
一瞬赤い×マークに目を奪われ黙ってしまった二人は、改めて目配せしあうと恐る恐るそれに近づいてみました。
赤い×マークは、とあるロッカーの扉に大きく描かれていました。
並んでいるロッカーは、扉が開いているもの、扉自体がなくなっているものなど状態は様々でしたが、赤い×マークが付いているロッカーの扉は、ぴっちりと閉じています。そのせいかは分かりませんが、周囲は何やら異様な雰囲気が漂っているように感じたそうです。
そして姉と友達は、×マークのついた扉を開けるかどうかで悩んだそうですが……結局は開けずに、その場を去る事にしたのだとか。
そのロッカーから折りたたまれた女性の遺体が発見され、事件が発覚たのは、姉たちがそこを訪れたわずか3日後のことだったそうです。
後になって考えてみると、あの赤い✕マークが強烈に目についた理由は、古いものだらけの建物内で、あれだけが新しいものだったからじゃないか……とは、姉の談です。
<終>
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