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士官学校からバスで乗り、いつもと変わらない煉瓦造りの街並みを眺める。
ふと、窓に反射して写った自分の髪が気になった。肩甲骨まで伸びたブラウンの癖っ毛。決して癖が強いわけでは無いけれど、ここまで伸びると手入れも面倒。
「演習が終わったら、切ろうかな。」
そんな事を呟きながら、私はバスに揺られていた。
私の家は、国の中心から離れた壁寄りの地区にある。
大きな鐘の付いた白い教会。ここが私の家だ。
修道女シスター・サラが営むこの教会では孤児院も兼ねており、身寄りのない子供たちが生活している。私もその1人。
「ただいまー!」
教会と併設された孤児院のドアを開け、帰ったことを知らせる。いつもなら妹たちが「おかえりー!」と駆けつけて来るのだが……。
「あれ?」
誰も来ない。玄関から伸びる廊下や2階へ続く階段は光すら灯されていない。
いや、唯一光が漏れる部屋があった。廊下の角を曲がった先、食堂だ。
そこに何かあると思い、自然と足を運ぶ。
中からは人の気配がし、小さく会話も聞こえる。
「…?ただいまー。」
不思議に思いながらも、もう一度帰ったことを知らせ、食堂のドアを開けた。
パンッ!パーンッ!
目には光が飛び込んでくる。暗い廊下から入った為、室内の明かりがより眩しい。
「っ!?!」
耳を劈くような銃声にも似た音に、自然と身構え、腰にあるはずも無いホルダーに手を掛けようとしてしまう。
「おかえりなさーい!」
強ばる私の腰にしがみついて来たのは、末っ子の双子ララとリリ。
奥のテーブルには豪華な食事が並べられ、シスター・サラや他の妹たちがクラッカーを手に、席に着いていた。
えっ…え? 何事?!
「明日、16歳の誕生日でしょう? その前祝いと演習の成功祈願よ。みんなで作ったの。」
シスターが落ち着いた物腰で微笑みかけてくる。
「あ…そっかぁ。」
演習の事ばかり考えて、すっかり頭から抜けていた。
明日は、私が拾われた日……。
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