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「いただきまーす!」
全員で声を合わせ、食事を摂り始める。
「このサラダ、ララが作ったんだよ!」
「リリもお野菜ちぎった!」
賑やかな食事の中、シスターだけは食事に手をつけず、浮かない顔でいた。
「どうしたの?」
ララたちの作ったサラダを取りながら尋ねてみる。
最初、シスターは口をもごつかせ躊躇いを見せていたが、やがて重たい口を開けた。
「アンジュ……辞めてもいいのよ?」
「……。」
いつになく真剣な表情と声。それを察してか、はしゃいでいた妹たちが黙ってしまう。
「家計を支えようとしてくれるのは嬉しいし立派な事だと思うわ…。だからって軍に入らなくても…。明日の演習だって国外…『スラム』へ行くのでしょう? 何もそんな危険を犯さなくたって――。」
「シスター。」
シスターの気持ちは痛いほど伝わった。軍の仕事が過酷で危険な事は知っている。そんな場所で、私を働かせたくない優しさも分かる。でも。
「違うの。私が士官学校に入ったのはね、そんな立派な理由じゃないよ。宇宙に……シャングリラに行く為なんだ。士官学校を卒業すれば、コロニーへの移動許可証が出る。そうすればシャングリラに入隊出来るでしょ?」
「シャングリラに……?」
その言葉にシスターは顔を上げた。私は続ける。
「シスター。昔、シスターがしてくれた天使様のお話覚えている?私は今も覚えているよ。今でも思い出して胸が温かくなるの。私の夢は昔からずっと変わらない。天使様になりたいの。シスターが話してくれたみたいに、星の為にみんなを助けるヒーローに、私はなりたい。」
真っ直ぐシスターの目を見つめる。これが私の思っている事すべてだ。子供っぽいと思われようと構わない。これが私の夢だから。
しばらくしてシスターはゆっくりと口を開く。
「自分の為って理由なら、止めたりはないわ。あなたは昔から誰かの為に行動することが多かったから。後先考えずに、ね。やりたい事があるなら、親として止めたりなんてするものですか。ありがとう、理由が聞けて良かったわ。」
そう言って微笑むシスター。こんな身勝手な理由を認めてくれる。私は、申し訳ない気持ちになった。
「私って親不孝者だね…。」
「私は幸せよ。」
シスターの優しい言葉の後にまた静寂が訪れる。
優しい気持ちになれる温かい静寂が。
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